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サイクル ロードレース コラム 2017年4月7日

【RECOMMEND】ドキュメンタリー ~The REAL~ 偉大なるツール・ド・フランス1986 グレッグ・レモンとベルナール・イノー プロトン特有の階級社会を打ち破ったレモンと、世代交代の瞬間を恐れたイノーが描いた、レースを通じた人間ドラマ

サイクルNEWS by 福光 俊介
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サイクルロードレースがまだ“ヨーロッパのスポーツ”だった1980年代、圧倒的な実力と絶対的な存在感でプロトンの頂点に立っていたベルナール・イノー。その顔つきや、追い込まれた時こそ本当の力を発揮する姿から、“穴熊”と呼ばれ恐れられていた。

チームにおける「孤高の存在」であるエースと、それを支える複数のアシスト。仮にアシストの1人がエースよりも実力で上回っていたとしても、チームや同僚がエースとして認めた人物を支えなければいけない。そうした明確なヒエラルキーは、現在のプロトンでも変わらない。

当時のプロトンは王者を頂点に恐ろしいまでの階級社会が成立していた。1978年のツール・ド・フランスで、イノーが選手たちによるストライキを先導したように、ときには強い団結を生むが、一方で簡単には上へと這い上がることが許されない残酷さを持ち合わせていた。


そんな中、「ヨーロッパ階級社会」の縮図とも言えるプロトンに飛び込んだアメリカ人ライダーがいる。グレッグ・レモン。のちのツール覇者である。

レモンにとってキャリアのスタートは、父・ボブとのサイクリング。当初はスキーで生かすトレーニングの一環でしかなかったが、やがてレースに出場するや次々と勝利を収め、才能を開花していく。自転車競技に魅せられた彼は、ライダーとしての未来を自らの力で切り拓いていく。1979年には、ジュニア世界選手権で優勝。メモに記した目標を達成してみせた。

この頃すでに王者に君臨していたイノーは、アメリカが生んだ若き才能を早速スカウト。表向きは、レモンを自身の後継者として指名したように振る舞ったが、実際は「敵にしたくない…」「ツールの覇権を譲りたくない…」といった一抹の不安心に駆られていたようだった。

そんなイノーの思惑をよそに、レモンはこれまでのトップシーンでは考えられなかった姿勢を飄々と見せていた。アイスを食べ、ゴルフを嗜み、妻を同伴して行動する…、それはフランス人から見れば、“風変わり”そのものだったが、そんな見方も実力で認めさせていく。イノーとの関係も良好で、レモンにとっては友人であり、師匠のような男だった。

そんな両者の関係が不穏になったのは1985年のツール。膝の痛みに悩まされながらも最強の座は譲らなかったイノーに対し、着々と力を伸ばしていたレモン。この大会ではイノーをエースに据え、彼に万一のことがあればレモンが立場を替わる取り決めだった。すべてのきっかけは、イノーのフィニッシュ前での落車。これによってコンディションを落としたイノーと、快調に戦いを進めるレモン、さらにはこの前年にチームを立ち上げ、強い発言力を持っていたベルナール・タピら首脳陣。彼らの意思が交錯していく。

この関係性は、翌1986年のツールにも及んだ。前年のこの大会で、「ある約束」をかわしたイノーとレモン。それを信じて戦い続けるレモンだが、レース内外で見せるイノーの振る舞いに悩まされることとなる。挙句、チームの垣根を越えてレモンの落車を画策する動きが生まれ、チームから出される補給食も口にすることができない日々を送る。

だが、この頃にはイノーやタピらを黙らせるだけの実力がレモンにはあった。同胞のアンディ・ハンプステンという心強い味方も得て、決して孤独な闘いとはならなかった。そして、この大会を境にアメリカなど英語圏の選手がトップシーンへと躍り出ていく。

レモンとイノー、互いに才能を認め合い、リスペクトしあっていた両者の関係は、どこで溝が生まれたのか。その後のレモンにもフォーカスし、イノーとの世代交代の“意味”を掘り下げていく。

【オンデマンド】ドキュメンタリー ~The REAL~ 偉大なるツール・ド・フランス 1986 グレッグ・レモンとベルナール・イノー
■配信期間:2017/04/07 17:00 ~ 2017/08/31 23:59

福光 俊介

ふくみつしゅんすけ。サイクルライター、コラムニスト。幼少期に目にしたサイクルロードレースに魅せられ、2012年から執筆を開始。ロードのほか、シクロクロス、トラック、MTB、競輪など国内外のレースを幅広く取材する。ブログ「suke's cycling world」では、世界各国のレースやイベントを独自の視点で解説・分析を行う

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