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サイクル ロードレース コラム 2017年4月18日

【フレッシュ・ワロンヌ プレビュー】春クラシック名物「ユイの壁」登場。4連覇に挑むバルベルデに、タイマンを張れる激坂ハンターは現れるか!?

サイクルロードレースレポート by 宮本 あさか
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世界最大級の激坂大戦がやってくる!なにしろ、勝負の審判を下すのは、世界各地に点在するいわゆる激坂の中でも最難関を誇る「ユイの壁」。しかも全長1.3km、平均勾配9.6%、最大26%という恐ろしき苦行は、3度、選手たちの脚に襲いかかる。

春クラシックシリーズもいよいよクライマックス。スプリンターフェスティバルや石畳大戦は全て終わり、残すはベルギー・フランス語圏のアルデンヌ地方で繰り広げられる、丘陵クラシック2戦のみ。一瞬の爆発力を武器に持つパンチャーはもちろん、本格的なヒルクライマーたちにも、平等に勝利のチャンスが巡ってくる。それどころか、グランツール総合表彰台常連さえも、表彰台のてっぺんを狙う。例えば近年では2011年ツール・ド・フランス総合覇者カデル・エヴァンスが、栄光の前年にユイの壁を制した。この水曜日のスタートラインにも、昨ツール総合2位ロマン・バルデや昨ツール新人賞アダム・イェーツ、ツール山岳賞2回ラファル・マイカetcが居並ぶ。

現在フレッシュ・ワロンヌ3連覇中(+2006年優勝)のアレハンドロ・バルベルデだって、ブエルタ優勝1回+グランツール総合3位入り6回という、とてつもないGCライダーである。ただし大会翌週に37歳の誕生日を迎える「エル・インバティド(無敵男)」にとっては、ご存知の通り、レース期間が3週間だろうが1日だろうが、季節が春だろうが秋だろうが、ほとんど関係ない。そこに坂道スプリントのチャンスがあれば……、思わず本能的に鮮やかなダッシュを決めてしまうのが素敵な持ち味だ。今年も開幕直後から呆れるほどに絶好調。2月にいきなりブエルタ・ア・ムルシア優勝&ルータ・デル・ソル総合優勝を決めると、3月はカタルーニャ一周区間3勝で総合優勝をかっさらい、アルデンヌ入り直前のバスク一周も、堂々総合優勝を手にしてきた。だから当然2017年大会も、バルベルデの名前が、真っ先に優勝大本命に上げられる。1年前に塗り替えたばかりの大会最多優勝記録を、あっさり「5勝」に更新してしまうかもしれない。

少々残念なのは今春クラシックキングへと完全復活したフィリップ・ジルベールと、過去2年バルベルデの背後でハンドルを叩いて悔しがったジュリアン・アラフィリップが、いずれも怪我のせいで大会棄権を発表したこと。それでも、「アルデンヌ巧者」のダニエル・マーティンやミヒャエル・アルバジーニ、マイケル・ヴァルグレン等々、役者は揃っている。今季とてつもなく絶好調のミハウ・クフィアトコフスキーも、激坂が大好物のセルジオ・エナオと共に、大会制覇を目論んでいる。グランツール狙いは一旦お休みというリゴベルト・ウランも4年ぶりにアルデンヌに帰ってくるし、着実に実力を上げつつあるティム・ウェレンスは、この春も必ずやアルデンヌで存在感を示してくれるはず。さらには日本の別府史之と新城幸也も、壁よじ登り大会に参戦する!

ところで今年のアムステル・ゴールドレースでは、伝統の勝負地カウベルフが今年のフィニッシュ手前から姿を消し、多くのパンチャーたちを嘆かせた。幸いにしてフレッシュ・ワロンヌは、「クラシック」の名にふさわしく、1983年から変わることなくミュール・ド・ユイが最後の最後に控えている。たしかにコース自体には、しばしば、細かに手が加えられてきた。起伏の数が増えたり(2013年)、3度のユイの通過感覚が変わったり(2014年)。ユイ直前に激坂を組み込まれたかと思えば(2015年)、中盤にやたらと長い登坂が登場したり(2016年)。

ただし、コース途中が変わっても、レース展開はほぼ同じ。つまり厳しい集団コントロールが続き、3度目のユイの壁突入まで集団は大きいまま。結局はフィニッシュ直前の数百メートルの加速一発のみで、勝負が決まってしまうのだ。

2017年も開催委員会は、諦めずに、異なるアプローチを試みる。上りの数は昨年の12から9へと一気に減らした。去年仲間入りした長い山道も姿を消した。一方で2年前に取り入れられたユイ直前の激坂=コート・ド・シュラヴ(登坂距離1.3km、平均勾配8.1%、最大15%)は、通過回数を2回に増やした。つまりアップダウンの繰り返しで疲弊させ、集団を少しずつ削っていくのではない。難しい上りを利用した大加速一発で、プロトンを一気に小さくばらけさせるのが狙いだ。

もちろん、誰もが望むのは、手に汗握るレース展開の果てに、3度目のユイの壁で最後の激戦が繰り広げられること。小さなチャペルが立ち並ぶ激坂の、最大勾配26%のシケインで、本当に強い選手が鮮やかな加速一発で全てを置き去りにしてしまうこと。でも、もしも、激坂に単独で飛び込んでそのまま逃げ勝利をさらい取ってしまう選手が現れたとしたら……、それは2003年以来14年ぶりの快挙となる。




■フレッシュ・ワロンヌ放送情報
4月19日 (水) 午後09:15~深夜 00:30 生中継&LIVE配信

宮本あさか

宮本 あさか

みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。

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