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ドイツでの30年ぶりのグランデパールは、大粒の雨にたたられた。198選手が走り終えた直後に、灰色の雲は去っていったけれど、空に虹はかからなかった。ドイツの大地でのドイツ人優勝は、またしてもお預けとなり、代わりにウェールズ人のゲラント・トーマスが黄色の栄光に輝いた。
観測史上最も暑い6月を過ごした欧州に、ほんの数日前から、寒さがぶり返してきた。しかも第1走者が14㎞の短い個人タイムトライアルコースへと飛び出して行った直後は、ほんのぱらぱらと雨粒が肩に落ちてくる程度だったけれど、徐々に雨脚は強くなっていく。多くの選手たちが、この先残り20日のことを考えて、カーブの多い平坦路を極力慎重に走った。自身7度目の「グランデパール」を迎えた新城幸也もまた、リスクを冒さず、初日を無事に乗り切ることを重視した。
「下りやコーナー、さらに白線やマンホールもたくさんあったので、危険は冒さず走るようチームからも指示されていました。でも、誰もが、同じ条件でしたからね」(フィニッシュ後インタビューより)
3週間後のマイヨ・ジョーヌを夢見て、1秒でも失いたくないはずのリッチー・ポートさえ、「だって今日のジャージを狙ってるわけじゃないから」(フィニッシュ後TVインタビュー)と慎重すぎるほどのコーナリングを見せた。ツール前哨戦のクリテリウム・ドゥ・ドーフィネでは、世界チャンピオンを下して個人タイムトライアルを制したけれど、この日は区間勝者から47秒遅れで「ほんのちょっとがっかりしているけれど」無事に走り終えた。またジロとの連戦となるナイロ・キンタナは48秒、昨大会総合2位ロメン・バルデは51秒、3度目のツール総合優勝を狙うアルベルト・コンタドールは54秒遅れで、静かに2日目への切符を手に入れた。
それでも、路面を覆う水の膜が、非情にも数人をアスファルトになぎ倒した。中でもスペイン全土が悲嘆にくれることになる。37歳にしていまだ衰えを知らないアレハンドロ・バルベルデが、カーブで滑り落ち、さらにはフェンスに激しく叩きつけられた。左膝蓋骨折で、即時リタイアを余儀なくされた。同じカーブでは、新城属するバーレーン・メリダの総合リーダー、イオン・イザギレも落車。腰椎骨折で無念にも大会を離れた。
ディフェンディングチャンピオンのクリス・フルームだけは、安全と成績を両立させた。全出走選手中、一番最後にフィニッシュラインを越えると、満面の笑みを見せた。第1の理由は、事故なく初日を乗り切れたこと。第2にドーフィネの総合4位で少々不調を心配されていたけれど、首位からわずか12秒遅れの区間6位に入り、全てが杞憂であると確証を持てたこと。つまりはポートを35秒、キンタナを36秒、バルデを39秒、コンタドールを42秒も早くも突き放すことに成功した。むしろフィニッシュ直後のインタビューでは、開口一番「Gが優勝してスーパーハッピーだよ!!!」と興奮したように語ったのだけれど。
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