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【Cycle*2024 フレーシュ・ワロンヌ:プレビュー】唯一絶対の勝負地「ユイの壁」を4回、誰が真っ先に上り詰めるのか
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写真:エスケープグループ
BMCのニコラス・ロッシュが全力で牽引し続け、そしてラスト800m、リッチー・ポートが――トーマスの言い方を借りると――飛び立った。初日に得意の個人タイムトライアルを慎重に走り過ぎて、「ほんの少しがっかりしている」と語ったオージーは、3日目は積極策を取った。ダンシングスタイルでペダルを力強く踏みつけ、先頭でぐいぐいと坂道を駆け上がった。
ただし上り始めこそ急勾配が続くものの、11%ゾーンを越えると、あとはだらだらとなだらかに上るだけ。つまりはマイヨ・ジョーヌ2回、マイヨ・ア・ポワ2回、マイヨ・ヴェール5連覇中の3人が数珠つなぎになるような、そんな多面性のある坂道だったということだ。そう、ポートの後輪には、アルベルト・コンタドールがすかさずしがみついた。その後輪には、ラファル・マイカの姿があった。そのまた後輪には、マイカの良きチームメートであるサガンがぴったりと張り付いて……。
「かなり楽々だった。ポートがアタックした時、他のヒルクライマーが追いかけるはずだと考えた。だから僕は、ただついていくことだけに専念した。それからポートを追い越したんだけど、まだフィニッシュまで400m残っていた。だから、すぐさま全力疾走に取り掛かる前に、ちょっと座り直したんだよ」(ペーター・サガン、公式記者会見より)
五輪金メダリストのフレフ・ヴァンアーヴェルマート、元U-23世界王者マイケル・マシューズ、起伏モニュメント2冠のダニエル・マーティン等々が後方からフルスピードで追いついてきたのを合図に、ラスト230m、サガンもようやくスプリントに取り掛かった。ただ、あまりにも楽々だったのもだから、右足がペダルから外れる→瞬時にはめ直す→再加速……という行程の間でさえ、トップの座を一度も譲ることはなかった。サガン本人の心の中は、どうやら、大いに混乱したようだけれど。
「ペダルが外れて、すぐに思ったんだ。今日は何が起こっちゃったんだ?勝利を逃してしまうのか?って」(ペーター・サガン、公式記者会見より)
だからこそハンドルを投げた。それから右手を上げて、人差し指をくるくると回した。モトクロス用のゴーグルがきらりと晴れた空に反射した。世界チャンピオンが、この日は全てを凌駕した。
「世界チャンピオンジャージを着て走れることを、すごく誇らしく思っている。レースへのモチベーションを大いに掻き立ててくれる。ただ(エリック)ツァベルの持つマイヨ・ヴェール最多記録に並べるかどうかに関しては、正直に言って特に何も……。僕が6枚目のマイヨ・ヴェールを取ったところで、地球上で何かが変わる?もちろん、答えはノーだ。人生において、もっと大切なことはたくさんある」(ペーター・サガン、公式記者会見より)
とりあえず第3ステージ終了後現在、サガンはポイント賞ランキング3位につけている。マイヨ・ヴェールは前夜の勝者、マルセル・キッテルの肩に羽織られた。マイヨ・ア・ポワはテイラー・フィニーのチームメート、ネイサン・ブラウンに首尾よく引き継がれた。また区間2位にはマイケル・マシューズが滑り込み、3位にはダニエル・マーティンがつけた。登坂口では「20番手くらい」だったフルームは、マイヨ・ジョーヌのトーマスに続いて、2秒遅れの9番目にフィニッシュラインを越えた。その他の総合勢も揃って同タイムで区間を終了。一方で今ジロ総合4位のティボ・ピノのように、「わざと」タイムを失った実力者も存在する。
写真:スパ・サーキットに入るプロトン
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宮本 あさか
みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。
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