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写真:第4ステージを制したデマール
たいくつな長距離ステージの最後に、事件が待っていた。スプリント中にペーター・サガンとマーク・カヴェンディッシュが接触し、英国人が激しく地面に叩きつけられた。アルノー・デマールがトリコロールの栄光をたっぷりひけらかし、自己にとってのツール区間初勝利と共に、2006年大会以来の「フレンチスプリンター勝利」をもぎ取ったというのに、話題は世界チャンピオンのレース追放にさらわれてしまった。
蒸し暑く、気だるい夏の午後だった。スタートと同時に、ギヨーム・ヴァンケイスブルクが弾丸のように飛び出して行くと、集団はぴたりと蓋を閉じた。コース地形は完璧なるピュアスプリンター向きで、行く手に待ち構える山はちっぽけな4級峠がひとつだけ。しかも、200km超のステージはこれで連続3日目だし、前日のうんざりするような起伏で足は疲れ気味だし、気候の極端な変化に体がついていかないし、本物の休息日はまだ1週間も先で……。
「プロトン内では、足が痛い、っていう声がかなり聞かれました。距離の長さもそうですし、昨日は全部合わせて標高2600mも上りましたからね。だから、こんな日に逃げるなんて、無茶なんですよ」(新城幸也、フィニッシュ後インタビューより)
もちろん、ヴァンケイスブルクだって、自分がやっていることは自殺行為だということくらい十分に悟っていたのだ。いくらツール・ド・フランス初体験だとは言っても。
「飛び出してすぐに、自分が1人だと気が付いた。『このまま誰もついてこなかったら、すごい苦行になるぞ』と思った。ただ監督から、そのまま行けとの指示を受けた。『もしかしたら、そのうち他の選手が追いかけてくるかもしれないから』って。でも、誰もついてこなかった。振り返ってみたけれど、誰ひとり、いなかった。長くて孤独な1日だった。1人で向かい風の中を走っていると、なおのこと孤独を感じるものだね」(ヴァンケイスブルク、TVインタビューより)
1時間半ほど走っただけであっさり13分以上の大量リードを奪ったヴァンケイスブルクだが、その後はじわじわと距離を縮められた。かといってすぐに吸収される気配もなかった。生かさず、殺さず。というのもスプリンターチームが制御権を握ったプロトンが、1分半から2分ほど後方で、ヴァンケイスブルクを泳がせておいたからだ。
たった1人の逃げは、190kmでようやく幕を閉じた。フィニッシュまで約17kmを残して、ヴァンケイスブルクは静かにプロトンにバトンを渡した。クライマックスへ向けて、急激に集団スピードは増していった。
それにしても、全長207.5kmの最終2.5kmに、危険が潜んでいるとは!微妙な起伏と、頻繁に変わる道幅、そして90度カーブの連続。「ツールでこんなフィニッシュ設定は珍しい」とツール7度目の新城を驚かせたほどだった。特に残り1.4kmの右カーブには、ロードブックに「virage serre=狭い曲がり角」と注意が書き込まれていた。
まさにそこで、第1の事件が引き起こされた。集団のほんの前方で、集団落車が発生したのだ。マイヨ・ジョーヌのゲラント・トーマスは軽くアスファルトに転がり落ち、マルセル・キッテルは足止めを食らい、スプリントへの参加権利を失った。新城は急ブレーキでぎりぎり難を逃れたが、「残り4kmくらいで沿道に落ちたソンニ(コロブレッリ)の代わりに、僕がスプリントを任されていたのに」と、少々悔しさを隠せなかった。幸いにも「フィニッシュ3km以内タイム救済ルール」が適応され、総合表彰台候補たちのタイムには影響はなかった。
難を逃れ、フィニッシュへと急いだ15人ほどの小さな集団に、第2の事件が降りかかる。アレクサンドル・クリストフが真っ先に長いスプリントを切り、誰もがトップスピードに乗っていた時のことだった。
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