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【Cycle*2024 フレーシュ・ワロンヌ:プレビュー】唯一絶対の勝負地「ユイの壁」を4回、誰が真っ先に上り詰めるのか
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写真:マイヨ・ジョーヌを着たフルーム
クラッチの焼ける匂いが、わずか3度目の登場ながら、すでにツールの名物となった激坂に立ち込めた。アスファルトが溶けるほどの灼熱の太陽の下で、最大勾配が20%を超える怪物を、ファビオ・アルが先頭でよじ登った。2012年、2014年に続いて、プランシュ・デ・ベルフィーユが大会の主役をあぶりだし、ディフェンディングチャンピオンのクリス・フルームが早くもマイヨ・ジョーヌを身にまとった。
前夜の世界チャンピオン失格劇で大きく揺れたヴィッテルから、今大会最初の本格派山頂フィニッシュへと走り出した。先陣を切ってアタックを打ったのは、トマ・ヴォクレールだった。ヴォ―ジュ山脈と隣接するアルザス地方で生まれ育った38歳は、18日後に自転車を降りる前に、自らの名をもう一度ツールの歴史に刻みたいと熱望していた。「逃げたいと思ってるけど……、きっと今日は100人くらいが逃げたいって思っているんじゃないかな?だって厳しいのは最終峠だけだから」とスタート前に語ってはいたけれど、区間4勝&マイヨ・ジョーヌ通算20日間を誇る大逃げ巧者の動きに、上手く追随できたのは7選手だけだった。
出来上がったのは、かなりの実力派集団。ヤン・バークランツ、エドヴァルド・ボアッソンハーゲン、トーマス・デヘント、ミカエル・ドラージュ、ピエールリュック・ペリション、ディラン・ファンバーレに、そしてフィリップ・ジルベール!ただ実のところ、最後の1人は、どうやら「100人くらい」の範疇には入っていなかった。
「予定なんかしてなかった。ただ楽しみたいと思っていただけ。あんなフィニッシュが僕には勝てないことくらい、分かっていたよ。それでも、何か、僕にもできることがあるに違いないと考えた。前に飛び出した瞬間から、少なくとも、『何かをトライした』ことへの対価は得られるものだから」(ジルベール、ミックスゾーンインタビューより)
壁のような全長5.9kmの激坂だけが、逃げ切り勝利を阻んだわけではない。むしろ後方でリッチー・ポート擁するビーエムシー レーシングチーム(BMC)が精力的に制御を行ったせいだった。タイム差は最大3分程度しかもらえなかった。残り13kmでは自ら力強いアタックを打ち、同じベルギー人のバークランツだけを連れてぎりぎりの逃避行を続けたが、すでにスピードの塊となっていたメイン集団に最終峠で飲み込まれていった。気温が35度まで上昇した猛暑日に、35歳の誕生日を迎えたジルベールにとって、逃げの対価……つまり自分へのプレゼントは赤いゼッケンの敢闘賞となった。
山の日ではあったけれど、スプリンターたちにも奮闘する理由があった。5年連続マイヨ・ヴェールを独占し続けてきたペーター・サガンが、危険行為を咎められ、賛否両論巻き起こしつつ大会を去り、これまで区間30勝を荒稼ぎしてきたマーク・カヴェンディッシュが、落車による右肩骨折でツール続行を断念したからだ。つまりポイントを奪い合うライバルの数は減り、緑ジャージの間口が少し広がった。だからこそ中間ポイントでは、いつにも増して熾烈なスプリントが争われた。前でも、後ろでも。
最前線では、ボアッソンハーゲンがポイント獲得に走った。後方ではマイケル・マシューズ、マルセル・キッテル、アレクサンドル・クリストフ、アルノー・デマール、ソンニ・コロブレッリ等々が接戦を展開。マシューズが9位でメイン集団先頭通過を果たし、開幕時には「緑は狙わない」と宣言していたデマールがマイヨ・ヴェールの座を守った。
プランシュ・デ・ベル・フィーユの坂道に突入するころには、1日中働いてきたBMCのアシストたちは疲れ果て、すでに次々と脱落し始めていた。代わりにチーム スカイが集団先頭を奪った。いつもの黒い列車ではなく、白く爽やかな山岳トレインが、恐ろしく機械的なテンポを刻んだ。登坂口からいきなり10%近い勾配が襲い掛かる激坂で、メイン集団はあっという間に小さくなっていく。
その隊列の背後から、ラスト2.4km、ファビオ・アルは猛然と飛び出した。「まるでブエルタみたい」と評判の山で、2015年ブエルタ覇者は、特徴的なダンシングスタイルで執拗に加速。素早くライバルたちとの距離を開いた!
「この山を上った経験はなかった。だからフルーム(2012年)やニバリ(2014年)が優勝した時の映像を見た。そのビデオを見ながら、今日まさに加速を切った場所で、アタックしようと決めた。それに常にアタックを試みるべきなんだ。だって無料だからね。だから調子が良いときは、いつだって試みるようにしている。今日もそうだった」(アル、公式記者会見より)
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