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サイクル ロードレース コラム 2017年7月14日

ツール・ド・フランス2017 第12ステージ レースレポート

サイクルロードレースレポート by 宮本 あさか
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写真:初めてマイヨ・ジョーヌを着たアル

「言い訳はしない。僕には単純に脚がなかった。バルデとアルにはおめでとうを言いたい」(フルーム、フィニッシュ後インタビューより)

クリス・フルームが白と水色のジャージに着替えた。チームバスに詰めかけた大量の記者たちの前で、いつも通り紳士的な態度で……、上記のコメントを3度繰り返した。ロメン・バルデが区間勝利を手に入れ、ファビオ・アルが総合首位に駆け上がった後方で、フルームの足は少しだけ止まった。マイヨ・ジョーヌ着用日数は51日で一旦止まり、本人によれば「戦いは今まで以上にオープン」になった。

細かい雨の降るポーから、200kmを超える山岳マラソンコースへと走り出した。12選手が逃げの切符をもぎ取った。行く手には6つの峠が待ちかまえていたというのに、スプリンターに区分される2人も、大胆に前方へと飛び出した。激坂過多の第9ステージですでに「サガン風」を試みたマイケル・マシューズと、なんとマイヨ・ヴェールを着用するマルセル・キッテル本人である!

もちろんも2人にとっての勝負地は、道の果ての山頂フィニッシュではなく、94km地点の中間スプリント。冷たい雨にも負けず、マシューズが先頭通過20ptをさらい取り、キッテルも2位通過17ptを懐に収めた。

それにしてもマシューズは、活力がありあまっていたようだ。この日3つ目の登坂口で、緑ジャージが静かに脱落していったにも関わらず、アルデンヌ巧者のオージーは元気よくエスケープを続けた。可愛い赤玉ジャージを身にまとうチームメート、ワレン・バルギルのために、「他人のポイント潰し」の山頂スプリントに打って出た。2級アレス峠では2位通過、1級マンテ峠では山頂スプリントで首位通過!

ついでに、マンテ峠からの長い下りでは、猛スピードのダウンヒルさえも敢する。単独アタックか……と思われたが、実は、単にいつもの「グルペット」ペースで下っていただけらしい。下り切った時点で後ろを振り返り、誰もついてこないことに気が付くと、減速して他の10人の合流を待った。さすがに次の峠に差し掛かると、無理はせず、後方へと下がっていった。

エスケープは一時、6分15秒のリードを許された。ただしラスト約40kmからの超級ポール・ド・バレス→1級コル・ド・ペイルスルド→2級ペイラギュードの3連続登坂へと突入すると、急速にタイム差は縮まっていく。バレスの山道でトーマス・デヘントが独走を試み、さらにラスト33km、ひらりと追いついてきたスティーブン・カミングスが単独で逃げを続行するも、もはや吸収は時間の問題だった。

後方ではマイヨ・ジョーヌ親衛隊が、高速テンポを刻んでいた。スペイン国境にほど近い山々では、バスクの旗が風にたなびき、懐かしいオレンジ色のジャージがあちこちで目についた。元エウスカルテル所属のミケル・ニエベとミケル・ランダが牽引するチーム スカイの山岳列車は、いつも以上に猛威を振るった。

あまりに奮闘しすぎて、バレス山頂からの下りでは、ニエベが道を外れ、つられてフルームとアルがキャンピングカーの隊列に突っ込みそうになったことも……。2年連続で山岳ステージを仕留めてきたカミングスは、フィニッシュまで9kmを残して、ついには先頭から引きずり降ろされた。

ベテラン英国人を飲み込む前に、バスク人に引かれた英国列車は、すでにナイロ・キンタナを振り払っていた。さらにペイルスルドの山頂まで数百メートルで、アルベルト・コンタドールも遅れた。前日も含め3度の落車を喫したグランツール総合7勝の王者は、「アルプスを待つ」との慎重な発言とは裏腹に、1つ手前のバレス峠では、山岳賞バルギルの加速に反応する姿も披露していたのだけれど。

最終峠ペイラギュードの麓でニエベが最後の猛ダッシュを行うと、代わってラスト500mまでは、ランダが見事な献身を尽くした。ジョージ・ベネットの抜け駆けを、きっちりと封じ込めた。

「チームメートは今日もまた、素晴らしい仕事をしてくれた。ただ僕自身が、それを生かすことが出来なかった」(フルーム、フィニッシュ後インタビューより)

その直後だった。すでに214.1kmの山道を走り抜け、最後の400mに差し掛かった。ツール初登場の、最大20%超の激勾配ゾーンが、フルームの脚を止めた。かつて英国諜報員007の映画の舞台ともなった、山岳飛行場の滑走路を利用して、勢いよく飛び立つことはできなかった。

「あまりに暴力的で、僕にはあまりに厳し過ぎた」(フルーム、フィニッシュ後インタビューより)

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