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写真:名所イゾアールを制したバルギル
114年の歴史を誇るツール史上、初めてのイゾアール勝者として、ワレン・バルギルがその名を刻んだ。「本物のチャンピオンを選び出す山」として名高い伝説峠では、総合本命たちも大会最後の「直接」対決を繰り広げた。ロメン・バルデが誇り高き戦いを挑み、マイヨ・ジョーヌのクリス・フルームは自らの圧倒的優位を、改めて証明してみせた。
見事な決戦日和だった。早朝は霧の中に姿を隠していたアルプスの山々も、プロトンがスタート地に集結するころには、神々しいほどに雄大な姿をあらわにした。はるか彼方には、これから挑みかかる岩と砂だけの異質な世界が、はっきりと見えた。来るべき苦しみを予想しつつ、しかし、多くの選手たちはむしろ武者震いした。
なにしろスタートの合図が切られると同時に、次々とアタックが繰り出された。我らが新城幸也も、前夜の集団落車の影響で痛めた腰をかばいつつ、今一度エスケープに挑戦した。
「僕や(トマ・)ヴォクレールなど4人くらいで前に飛び出して、そのまま下りに入りました。そうしたら目の前に長い登りが見えてきて。後ろを振り返ってみても、すぐ背後には集団がつながっていて。だから一旦、僕は集団に戻るほうを選んだんです。集団はアタックの勢いそのままに、下りへと突入していきました。そうしているうちに、長い登りの上の方で、すぱっと集団が割れてしまいました」(新城幸也、フィニッシュ後インタビューより)
54人の大きな一団が出来上がった。すなわちプロトンの約3分の1が、前方へと進み出たことになる。乗り遅れたのはチーム スカイ、チーム ロットNL・ユンボ、ボーラ・ハンスグローエの3チームのみ。UAEチームエミレーツ、ディレクトエネルジー、チームフォルテュネオ・オスカロに至っては大量5人も前方集団に送り込んだ!
「スカイがすぐに制御に入ったので、その先もメイン集団のスピードは一切下がりませんでした。だって50人以上が前で回しているんですよ。普通にしてても、どんどん離れて行っちゃいますから!」(新城幸也、フィニッシュ後インタビューより)
めったに見ないほどの巨大な逃げ集団が、最大9分程度のリードしか奪えなかったのは、つまりスカイ隊列の尽力の賜物だった。大集団を嫌った選手たちは、さらに前方へと飛び出そうともがいた。1級ヴァール峠の山道で、巨大な塊は、ついに分解する。
イニシアチブを取ったのは当然、山岳巧者たちだった。中でも7月20日のコロンビア独立記念日を勝利で飾るため、ダルウィン・アタプマは毅然と加速を繰り返した。ライバルたちに追いつかれ、カウンターアタックで先行を許したこともあった。しかし、超級イゾアールのざらついた山道へと突入し、山頂まで残り6km……つまり標高2000mの境界線周辺で、満を持して最前線へと進み出た。標高3000mを超える町で生まれ育ったコロンビアのヒルクライマーにとって、ツール史上3番目に標高の高い2360m地点での山頂フィニッシュ――1位はガリビエの2645m、2位グラノン2413m――など、決して恐れるには足りなかった。……ただ残念ながら、自身初の、そしてチームにとって今大会1勝目のツール区間勝利は、お預けとなってしまう。メイン集団から飛び立ったフレンチクライマーに、逆転されてしまうからだ。
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