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写真:走り終えた後、座り込んでしまったバルデ
ひときわ大きな声援に背中を押されたフランス期待の星は、23秒遅れの総合2位として走り出した。その2分後に、最終走者が大ブーイングの中でコースへと飛び出して行った。ちなみにフルーム本人は「だってここはフランスだし、ライバルがフランス人だし、なによりサッカースタジアムなんだから当然じゃない?」(公式記者会見より)とあっけらかんとしたものだ。それどころか、2017年ツールで一番すてきな思い出は、この競技場で作られたと断言する。
「ヴェロドロームへ、目と鼻の先まで追い詰めたバルデと、一緒に入場できたこと!」(フルーム、公式記者会見より)
まさしくバルデがヴェロドロームに走り込んできた、わずか3秒後に、黄色いジャージもフィニッシュラインに飛び込んだ。つまりバルデから新たに1分57秒リードをむしり取り、1985年以来となるフレンチマイヨ・ジョーヌ誕生の夢を、あっさり蹴散らした。本人も周囲も予想していた通り、6秒遅れの区間3位と、総合勢では圧倒的なベストタイムを叩きだした。
バルデはそれどころか、リゴベルト・ウランに対して有していた6秒の黒字も全て使い果たし、1分26秒の赤字に転じた。総合3位・2分20秒遅れに転落し、表彰台だけはかろうじて守るも……。「この総合3位の座を守り通せるといいのだけれど」と、公式記者会見のバルデは、慎重に発言している。なにしろわずか1秒後の、総合2分21秒差には、ミケル・ランダがつけている。
「他のチームと話し合ったわけではないけれど、(チームが最終日にこの1秒差をひっくり返しに行くとしたら)かなり驚きだね。だって今日で、総合の戦いは、終わったんだよ。明日はスプリンターが争う日だ」(フルーム、公式記者会見より)
もちろんフルーム自身の総合の戦いも、パリ到着前夜に締めくくられた。ただ2位に昇格した54秒差のウランによれば、初日のデュッセルドルフで、バトル参加はすでに締めくくられていたらしい。たしかに第1ステージ、14㎞の個人タイムトライアルで、フルームはウランに早くも51秒差をもぎ取っている。過去3度の総合優勝とは違って、1つも区間を制することはできなかったけれど、つまり3週間の戦いの第1日目から、フルームは着実に勝利を積み重ねていったのだ。
「区間を勝てなかった失望はない。グランツールとは3週間どのように努力を重ねていくのかが大切で、1つのステージで争われるわけじゃないからね。なにより僕にとって、素晴らしいツールだった。今大会を制するためには、3週間通して安定した走りを見せ、常に先を読み続けなければならなかった。1つの区間で大差がついてしまうような、そんな大会じゃなかった」(フルーム、公式記者会見より)
スタジアムでの表彰式は。なんだかまるで、決勝戦の後のような雰囲気が漂っていた。もちろん、2017年ツールは、まだ終わりではない。マルセイユで一晩過ごしたら、パリへと大急ぎで向かい、恒例のシャンゼリゼスプリント競走を繰り広げねばならない。7度目のツール完走間近の新城幸也が、世界で一番美しい大通りで、逃げへの意欲も表明している!
☐ ツール・ド・フランス 2017
ツール・ド・フランス2017 7月1日(土)~7月23日(日)
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宮本 あさか
みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。
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