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その緑ジャージは6年ぶりに所有者が変わり、マイケル・マシューズが初めてシャンゼリゼの表彰台に上った。チームメートで今大会中のルームメートでもあるワレン・バルギルは、山岳賞とスーパー敢闘賞をダブル受賞。1年前はアダムが勝ち取った純白の新人賞ジャージを、今年は双子のサイモンが着こなした。
フルーネウェーヘンがぎこちなくガッツポーズを握りしめたはるか後ろでは、マイヨ・ジョーヌ姿のクリス・フルームが、アシストたちと健闘をたたえ合いながら、笑顔でフィニッシュラインを越えた。その瞬間、自身4度目のツール総合優勝が確定した。マルセイユですでに決まっていた通り、リゴベルト・ウランが総合2位に、ロメン・バルデが総合3位に入った。1秒差で4位につけるミケル・ランダが、無理な逆転劇を試みることはなかった。
初日のチームリーダの落車リタイアという苦難を乗り越えて、新城幸也は7度目のシャンゼリゼフィニッシュを心から楽しんだ。
「不完全燃焼なんてないです。たしかに逃げには乗れませんでしたけれど、逃げに乗るために、100%の力を使ってきましたから。スプリントにも日々チャレンジして、もう無理、と言うところまで力を尽くしてきました。つまり毎日、100%を出し切ったんです」(新城、フィニッシュ後インタビューより)
さらには「走りながらトマ(ヴォクレール)にも『おめでとう』と声をかけることが出来ました」と、長年のチームメートの労をねぎらった。マイヨ・ジョーヌを通算20日間着用し、フランス自転車界を必死で支え続けてきたヴォクレールは、特別にシャンゼリゼの表彰台に上ることを許された。
<写真:左から山岳賞のバルギル、新人賞のイェーツ、総合優勝のフルーム、ポイント賞のマシューズ
ところでフルームは、現時点では、ツール史上唯一の総合4勝選手である。すなわち、ツール114年の歴史で、4勝で永遠に足止めされた選手は存在しないということでもある。だからフルームにとっても、この4勝目は、単なる通過点に過ぎないのかもしれない。ジャック・アンクティル、エディ・メルクス、ベルナール・イノー、ミゲル・インドゥラインにとって、そうだったように。
「ツール・ド・フランスを5回制したもっとも偉大なる選手たちに続いて、自分の名前が挙げられることだけでも、すでに大いなる名誉を感じているんだ。でも、僕はこの先もレースやシーズンを、ひとつひとつこなしていくだけ。それに今は、ツールを5回制することがどれほどまでに難しいことなのかを、はっきりと理解している。1つ勝つたびにどんどん戦いが簡単になっていく……というわけじゃ決してないからね。たとえば今年のツールは、かつてないほど僅差だった」(フルーム、第20ステージ公式記者会見より)
フルームの5勝目クラブ入会試験は、2018年7月7日土曜日、ヴァンデ地方から始まる。ちなみにサッカーワールドカップの開催時期との兼ね合いもあり、例年より1週間遅い開幕となる。「だったらジロとツールの同一年ダブルツールを狙えるんじゃない?」と質問されて、「1週間遅いのかぁ。うーん、うーん……」と悩んでいる様子も見られたけれど、とりあえずこの8月19日から、ツールとブエルタの同一年ダブルツールに再々挑戦する予定だ。
☐ ツール・ド・フランス 2017
ツール・ド・フランス2017 7月1日(土)~7月23日(日)
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宮本 あさか
みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。
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