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【Cycle*2024 フレーシュ・ワロンヌ:プレビュー】唯一絶対の勝負地「ユイの壁」を4回、誰が真っ先に上り詰めるのか
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トップ選手たちの落車によるリタイアも、強い印象を残した。
先ほどキッテルの落車について触れたが、レースの序盤から、強力な選手たちが姿を消していった。デュッセルドルフの雨のTTで転倒し、レースを去ったアレハンドロ・バルベルデ。この雨のTTで優勝し、イエロージャージを4日間着用しながら、第9ステージの落車でリタイアを余儀なくされたゲラント・トーマス。同じ第9ステージの最終峠、モン・デュ・シャの下りで地面に叩きつけられたリッチー・ポート。
第4ステージ、ヴィッテルのゴールスプリントではカヴェンディッシュが激しく落車し、今後の選手生命にかかわる大きなケガを負った。UCIの裁定では世界ロード王者のペーター・サガンがこのクラッシュの責任を問われ、即時失格となり、論争をよんだ。
例えば、バルベルデやポートが今年のツールを完走していたら、山岳での戦いは、また違う展開になっていたかもしれない。スプリントにおける力のバランスも変わっていただろう。言い古されたい方ではあるけれど、しかし、レースに「もし」はないのだ。
何人かのスター選手たちが姿を消した一方で、今年のツールはさまざまなスターを生みだした。
ゴール前5kmで両足を痙攣させながら、ジュラ山脈のビッグステージで初優勝をあげたリリアン・カルメジャーヌ。向かい風の中の27kmを独走したバウク・モレマ。ガリビエ峠が登場したアルプス難関ステージを制した、スキージャンプの元世界王者、プリモシュ・ログリッチェ。240mで勝利を逃した悔しさを、最終日前日のTTで晴らしたマチェイ・ボドナール。シャンゼリゼで初めての区間優勝をあげたディラン・フルーネウェーヘン。
チームスカイとフルームの優位は簡単には覆されないだろう。それでも、総合を狙う選手たちの中で世代交代が徐々に進み、力のバランスが変わってきているように感じさせるシーンもあった。今回設定された3つの山頂ゴールでは、アル、バルデ、バルギルがそれぞれ勝利をあげた。ウランが総合2位を獲得したことも含め、これから先のグランツールにおける総合争いを、ますます期待させるツールだったように思う。
寺尾 真紀
東京生まれ。オックスフォード大学クライストチャーチ・カレッジ卒業。実験心理学専攻。デンマーク大使館在籍中、2010年春のティレーノ・アドリアティコからロードレースの取材をスタートした。ツールはこれまで5回取材を行っている。UCI選手代理人資格保持。趣味は読書。Twitter @makiterao
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