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サイクル ロードレース コラム 2017年8月23日

ブエルタ・ア・エスパーニャ2017 第4ステージ レースレポート

サイクルロードレースレポート by 宮本 あさか
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最終5kmにカーブやロータリーが連続して登場したのも、集団の混沌を増幅した原因だった。分断や落車の危険をどうにか避けようと、総合勢の選手たちはこぞって前線へと競り上がった。誰もがあまりに必死だった。そしてタイム差救済措置が発動されるラスト3kmに突入する、ほんのわずか手前で、ついに集団落車が起こった。

地面に転がり落ちた不幸な選手たちの中に、前区間終了時で総合9位(43秒差)につけていたドメニコ・ポッツォヴィーヴォと、総合14位(1分20秒差)のダニエル・モレノの姿があった。落車よりも痛かったのは、それぞれに3分25秒と1分38秒を失ってしまったこと。アレハンドロ・バルベルデもナイロ・キンタナもいないモヴィスターチームを支えるスペイン人は27位まで順位を落とし、ロメン・バルデのチームメートは、一気に総合33位へと陥落してしまった。

カオスの波を見事にかいくぐって、ラスト1.5kmで、クイックステップが最前列の位置を取り戻した。なにより2日前にトレンティンに「お前が飛び出せ!」と背中を押してもらったイヴ・ランパルトが、恩返しとばかり、発射台の役目を買って出た。自慢のルーラーの脚を惜しみなく発揮すると、トレンティンを好位置で解き放った。

「2日前は、僕らチームは、完璧に作戦を遂行した。まさに傑作だった。そして今日は、予定によると、僕が勝ちに行く番だった。チームのみんなが、僕のために、責任を持って仕事を行ってくれた。みんなに完璧な場所まで連れて行ってもらえたから、あとは作品を完成させるだけでよかった。完璧だったんだ!」(トレンティン、フィニッシュ後インタビューより)


完璧、という言葉を何度も繰り返したトレンティンには、フィニッシュラインを越えながら、喜びを噛みしめる余裕さえあった。ジロ区間1勝(2016年)、ツール区間2勝(2013・2014年)に続く、ブエルタでは初めての区間勝利だった。つまりトーマス・デヘントが狙っていたはずの、「3つのグランツール全てで区間勝利を手にした史上100人目の選手」となった!

「自分のキャリアの中に、この記録は、永遠に刻み付けられることになるだろう。そんな凄い快挙を、クイックステップのジャージ姿で樹立できたことを、すごく誇りに思っている。だってジロの区間も、ツールの区間も、そして今回のブエルタの区間も、全てこのチームと共に勝ち取ってきたんだから」(トレンティン、公式記者会見より)

なによりプロ入り以来6年半過ごしてきたチームに、2017年グランツールの区間12勝目をもたらした。ほんの2日前に、同一年グランツールでの最多区間勝利数を更新(これまでは2013年の10勝が最多記録)したばかりのクイックステップにとっては、素晴らしい置き土産となったに違いない。トレンティンは来季から、オリカ・スコットの一員として走る。

また落車でタイムを失った前述の2選手以外は、総合上位勢は揃って先頭集団で1日を終えた。フルームは2秒という僅差を守り切り、赤いジャージを再び身にまとった。

「フィニッシュライン間際での分断を、心底恐れていた。だって最終盤には危険な罠があちこちに潜んでいたからね。前方に留まるために、必死にしがみついた甲斐があったというものさ。だから今はただ、マイヨ・ロホを再び着られたことを、心から楽しみたい」(フルーム、公式記者会見より)

ところで、明日のことは明日考える、とフルームは語っているけれど……、その明日にあたる第5ステージには、2秒差どころか10秒差くらいならあっさりひっくり返りそうな、とっても楽しい登坂フィニッシュが待っている。

宮本あさか

宮本 あさか

みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。

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