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最終峠は3.4kmと極めて短く、極めて烈しかった。逃げのライバルを全て振り払ったアレクセイ・ルツェンコが、海の見える高台へ単独でよじ登ると、生まれて初めてのグランツール区間を手に入れた。総合勢の多くが激坂に苦しんだ一方で、2日前に体調不良でタイムを失ったアルベルト・コンタドールは、自分がいまだ終わってなどいないことを祖国のファンの目の前で証明してみせた。チームメイトたちの凄まじい献身に支えられたクリス・フルームは、また1日、着実にマイヨ・ロホを守った。
2017年のスペイン一周がようやく、100%スペイン国内の戦いを迎えた。多くの選手にとっては、待ちに待った、大会初めての逃げ切りのチャンスでもあった。スタート直後から、数人ずつの小さな塊が、次々と飛び出していった。ついには17人の大きな逃げ集団を作り上げた。
行く手には5つの山が待ち構えていたから、当然ながら、集まったのはかなりの脚自慢ばかり。中でも第3ステージで逃げ、いち早く山岳ジャージをまとっていたダヴィデ・ヴィッレッラが、この日も熱心に山岳ポイント収集に励んだ。4つ目の峠まで全て先頭で駆け抜けて、通算18ptを懐に入れた。ルイス・ギリェルモ・マスが毎回のように戦いを挑んできたけれど、昨秋のジャパンカップ勝者が脅かされることはちっともなかった。
しかし本人が「もしかしたら山岳ポイント収集にエネルギーを集中しすぎて、最終盤に輝けなかったのかも」(チーム公式リリースより)と振り返るように、青玉ジャージはしっかり着込んだけれど、区間争いには絡めなかった。なにしろヴィレッラは、4つ目の上りで、あまりにも寛大すぎた。
チームスカイが制御するメイン集団が、いつまでたっても3分半ほどしかリードを許してくれなかったのに、業を煮やしたのかもしれない。ヴィレッラは自ら進んで逃げの先頭に立つと、山頂まで5km以上にも渡って集団を牽引した。おかげで後方プロトンとの差は一気に5分ほどにまで開き、ついにはスカイも吸収を諦めた。さすがのマスもこの時ばかりは敬意を払い、山岳ポイントを争いには行かなかったほど。
下りに転じると同時に、逃げ集団から、マルコ・ハラーが猛烈な加速を切った。さらに2013年のU23世界チャンピオンであるマテイ・モホリッチがアクロバチックなダウンヒルテクニックを駆使して前に飛び出すと、その前年2012年のU23世界チャンピオンであるルツェンコもすかさず反応した。残り30kmで3人は合流し、さらに先頭はハラーとルツェンコの2人に絞り込まれた。
後方に取り残されたライバルたちだって、長いダウンヒルで執拗に追走を試みた。しかし上り巧者ヴィレッラが脱落し、いつしか激坂ハンターのジュリアン・アラフィリップも力なく後退して行った。メルハバ・クドゥスだけが最後まで執念深く追走を続けたけれど、エリトリアのヒルクライマーは、残念ながら祖国に史上初めてのグランツール区間勝利をもたらすことはできなかった。
最終峠に入った瞬間、ルツェンコはハラーを振り払い、独走態勢に持ち込んだ。平均勾配こそ4.2%と低めながら、終盤に20%近い難勾配ゾーンが待ち受ける激坂でも、ひたすらシッティングで突き進んだ。ただ歯を食いしばって、耐え続けた。幸いにも山頂では、生まれて初めてのグランツール区間勝利が待っていた。祖国のカザフスタンにとっては、チームの「ボス」アレクサンドル・ヴィノクロフの2010年ツールでの区間勝利以来となる、7年ぶりの栄光だった!
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