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サイクル ロードレース コラム 2017年8月27日

ブエルタ・ア・エスパーニャ2017 第8ステージ レースレポート

サイクルロードレースレポート by 宮本 あさか
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その下りで体力を回復しているうちに、猛スピードで背後からポランツェが追いついてきた。突如として三つ巴の争いになった。マイカがどうしても避けたかったスプリントに、勝負はもつれこんだ。

フレンチパンチャーにとっては最高の形だった。S字を描く軽い上り坂で爆発的に加速を切ると、そのままフィニッシュラインへいの一番で飛び込んだ。2位が3回という大得意のアルデンヌクラシックを、今春はひざの故障でスキップし、過去区間2位が自己最高成績のツールにも手術後のリハビリが手間取って出場できなかった。そんなあらゆるフラストレーションを吹き飛ばすような、晴れやかなグランツール区間初勝利だった。クイックステップにとっては今ブエルタで3つ目のステージ優勝であり、2017年グランツールではなんと13勝目!

「勝利を追い求めて逃げたんだから、もちろん勝利を信じて走り続けたよ。でも、やっぱり、実際に勝利を手にしてみると信じられないような気分だね。僕にとっては人生でたった2度目のグランツールで、ひとつステップを上がることが出来た」(アラフィリップ、フィニッシュ後インタビューより)

後方ではいつも通りに、スカイボーイズが献身的な仕事を続けていた。総合3分2分遅れのネルソン・オリヴェイラが逃げに紛れ込んでいたから、なおのことタイム差コントロールは重要な任務だった。

「チームのみんなに『ジャージを一旦手渡して、レースの責任を押し付けてしまおう』って言ってしまえたら、どんなに楽だったことか。でもチームのみんなは、逃げとの適度な距離を守るために、とてつもない努力をしてくれた。だから僕は、チームメートの仕事を、絶対に無駄にはしたくなかった」(フルーム、フィニッシュ後インタビューより)

最終峠の入り口でライバルチームが猛攻を切り、ひどく狭い山道を勢いよく攻め上げると、思わずマイヨ・ロホの姿が後方へと沈んでしまったこともあった。その隙にダヴィド・デラクルスやサイモン・イエーツ、さらにはマイケル・ウッズが飛び出し、ラスト5km地点では、ついにコンタドールも攻撃に転じた。



幸いにもスカイのアシストに連れられて、フルームは前線復帰を果たす。それからコンタドールとの距離を、自らの脚で埋めにかかった。しかも追いついただけでは満足せず、鋭いアタックを繰り出した。1度目の加速でメイン集団を一気に絞り込んだ。2度目の加速ではコンタドール以外の全員を振り払った。山頂間際で振り下ろされた3度目の加速では..コンタドールさえも千切った!

ただ百戦錬磨のベテランは、例の高速移動に、あえて反応しなかったようだ。山頂はほんの目と鼻の先だったから、ならば自分のペースで登り切り、下りで追いつこうと考えたとのこと。コンタドールの読みは正しかった。山頂通過直後に両者は合流し、以降、フィニッシュまで行動を共にすることになる。

フルームは積極的に前を引いた。マイヨ・ロホを着てはいたけれど、前区間終了時点で総合2位との差はわずか11秒。後方でもがくライバルたちとのタイム差を、少しでも広げておきたかった。だって明日は、来週は、脚の調子がどうなっているのかわからない。「だから取れるときには取っておけ」と、監督ニコラ・ポルタルからも発破をかけられた。

「コンタドールとの差は3分以上あったから、今日のところは、問題なく協調体制を組めた。おかげで大多数のライバルから、さらなるタイムを奪うことが出来た。すごく満足している」(フルーム、公式会見より)

アラフィリップの歓喜から1分27秒後、コンタドールとフルームが同タイムでステージを終えた。その17秒後には、ヴィンチェンツォ・ニーバリ、ファビオ・アル、エステバン・チャベス等々がフィニッシュに駆け込んだ。ニコラス・ロッシュやティージェイ・ヴァンガーデレンはさらに11秒を失った。つまりフルームと2位チャベスとのタイム差は、28秒に広がった。前夜までは総合1分以内に9選手がひしめいていたが、第8ステージ終了後には一気に5人まで数を減らした。

連日のように攻撃を試みるコンタドールだが、フルームからの遅れは相変わらず3分10秒のまま。ただ3日目の体調不良で大きく落とした総合順位は、24位→17位とまた少し盛り返した。ちなみにフィニッシュラインの直前では、チームメートのヘスス・ヘルナンデスが待っていてくれた。特に何かの役にたったわけではなかったかもしれない。ただ長年の友を必死で支えようという心意気は、リーダーにしっかり伝わったに違いない。

一方ではステージ前に、リーダーとアシストを巡る問題が、ブエルタの周辺を騒がせた。今大会は「アシスト」任務を課されていたツール山岳賞ワレン・バルギルが、前区間最終盤にメカトラで遅れた「リーダー」ウィルコ・ケルデルマンを待たなかったとして、所属チームから強制帰宅を命じられたのだった..。

☐ ブエルタ・ア・エスパーニャ2017
ブエルタ・ア・エスパーニャ2017 8月19日(土)~9月10日(日)
全21ステージ独占生中継!

宮本あさか

宮本 あさか

みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。

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