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サイクル ロードレース コラム 2017年9月2日

ブエルタ・ア・エスパーニャ2017 第13ステージ レースレポート

サイクルロードレースレポート by 宮本 あさか
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幅の広い直線道路を快適に突き進んできた集団は、残り4kmで、複雑な道へと追い込まれた。ロータリーやカーブが連続し、しかもラスト3kmからは、微妙な上りと下りが繰り返しやってくる。これまで190km以上に渡ってコントロールに努めてきたクイックステップが、真価を発揮するときがやって来た。

「マッテオ(トレンティン)ならきっと勝ってくれるに違いない、という確信がチーム全体にあった。この確信があるからこそ、僕らも100%を尽くせる。彼なら絶対に僕らの仕事を勝利で締めくくってくれるはずだ、と心の底から信じた」(テルプストラ、フィニッシュ後インタビューより)

上り口でのマキシム・モンフォールの加速は、2014年パリ~ルーベ覇者ニキ・テルプストラがきっちり回収した。続いて上りで2、3選手が相次いで揺さぶりをかけるも、この春のジロで2年連続の新人賞を手にしたボブ・ユンゲルスがテンポを上げた。

残り1kmのアーチをくぐり抜けるまで、もはやユンゲルスは誰にも先頭を明け渡さなかった。ラスト900mでペイオ・ビルバオが猛ダッシュを仕掛けると、次はジュリアン・アラフィリップが動く番だった。第8ステージに生まれて初めての区間勝利を手にしたパンチャーは、あの日自分を逃げに滑り込ませてくれた恩人のために、得意の爆発力を遺憾なく発揮した。すぐさま先頭を取り戻すと、この日最後のロータリーまで、夢中で前を引いた。


あまりの急加速に集団後方はズタズタに切り裂かれたけれど、肝心のトレンティンは問題なく前線にとどまった。そしてチームメートが引き継いできたバトンを、残り350mで受け取ると、勾配2%の上り坂で力強くスプリントを切った。

「正直言うと、最終盤は、本当の意味では僕向きの地形ではなかったね。地図だともっと簡単そうに見えたけど、実際はすごく難しかった。でもチームのみんなが100%の仕事をしてくれた。だから僕は勝たなきゃならなかった。こんなチームに支えられたら、絶対に仕事を締めくくらなきゃならないんだ」(トレンティン、フィニッシュ後インタビューより)

後方で気の早いアラフィリップがガッツポーズを突き上げ、その直後に、トレンティンが両手を天に向かって悠々と広げた。今大会3勝目を懐に収め、ついに2017年クイックステップをジロ5勝(フェルナンド・ガビリア4勝、ユンゲルス1勝)、ツール5勝(マルセル・キッテル)、ブエルタ5勝(イヴ・ランパルト1勝、アラフィリップ1勝)の偉業達成に導いた。

「すごいことだよね。ブエルタには自信を持って乗り込んできたけれど、こんな素晴らしい結果が出せるなんて想像さえしていなかった。まだブエルタは終わってない。チームがこの先もっとすごい結果を出せるように頑張りたい」(トレンティン、フィニッシュ後インタビューより)

緑ジャージ用のフィニッシュポイントも25pt積み重ね、ポイント賞2位クリス・フルームとの差を19ptに開いた。ただし翌第14ステージから再び道は険しくなる。しかもツールと違い中間ポイントの位置も点数配分(最大4pt)も、スプリンターには決して優しくはない。緑を最後まで守るのは、どうやら難しそうだ。

むしろ虹色ジャージ争奪戦に向けて、素晴らしいアピールとなった。ブエルタ閉幕から2週間後に行われる世界選手権に向けて、イタリア代表のエースはジャンニ・モスコンが最有力か……とメディア内では噂されていた。おそらくトレンティンの好調さを目の当たりにして、代表監督は大いに頭を悩ませているに違いない。

そのモスコンは、スプリントで区間2位に滑り込だ。ここまでの2週間は堅実にマイヨ・ロホのアシストに徹し、この日もフィニッシュ直前までフルームを守りきった才能高き23歳は、最後に即興で飛び出した。もちろんフルームも、15人にまで小さくなった先頭集団で、スプリントに混ざることが出来た。

「モスコンが僕のために素晴らしい仕事を成し遂げてくれた。もはや危険はないと判断した時に、『ステージを取りに行ってみろ』って声をかけた。もし僕のために力を尽くしていなかったら、彼が勝つチャンスもあったはずだ」(フルーム、フィニッシュ後インタビューより)

マイヨ・ロホと同じように、ほとんどの総合トップ10選手たちも先頭集団で危険を回避した。皮肉にもクイックステップのダヴィド・デラクルズは分断にはまったせいで7秒を失い、総合順位を4位から5位へとひとつさげた。

宮本あさか

宮本 あさか

みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。

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