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「ニーバリ、コンタドール、チャベスが飛び出していった時、僕らは上手くコントロールできたと思う。頂上までまだしばらく距離があったし、10分間の努力が待っていることは分かっていた。だから力を制御したんだ」(フルーム、フィニッシュ後インタビューより)
ニーバリとコンタドールが2人でさらなる攻撃に転じた後も、忠実なる山岳アシスト、ワウテル・ポエルスの後輪でフルームはじっと我慢した。
現役でただ2人だけの全3大ツール総合優勝経験者は、山肌に吹き付ける強風の中で、必死に前進を続けた。とりわけ「全てを試みた」と断言するニーバリは、幾度となく加速を図った。しかし、試みは、あえなく打ち切られた。残り2.5km、フルームがライバルの回収を決意し、ペダルの高速回転に切り替えた。数百メートル走ったところで、2人の偉大なるチャンピオンにあっさり追いついた。
ミゲル・アンヘル・ロペスモレーノのカウンターアタックに乗って、もう1度、ニーバリとコンタドールは前進にトライした。前夜総合4位に浮上したウィルコ・ケルデルマンのアタックにも、コンタドールは張り付いた。しかし、もはや、フルームは昔なじみのライバルを逃そうとはしなかった。その隙に、ただロペスモレーノだけが先に行くことを許された。新人総合首位の証=赤ゼッケンをつけた23歳が出ていってしまうと、ポエルスがすかさず戻ってきて、全員に秩序あるテンポを強いた。
むしろラスト1kmのアーチの手前でフルームが急激にスピードアップし、その後も加速を畳み掛けたせいで、コンタドールが小さな分断にはまった。一方のニーバリはきっちり対応し、ロペスモレーノのフィニッシュ直後に3位で区間を終えた。ボーナスタイム4秒を手に入れた。フルーム、イルヌール・ザカリン、ケルデルマンはニーバリと同集団で1日を締めくくった一方で、コンタドールはほんの6秒ながら新たにタイムを失った。
「自分たちの走りに満足している。危険な1日だった。でも終わってみれば、いい1日になった。ニーバリから4秒失ったのは大した問題じゃない。むしろ明日のむずかしいステージに向けて、エネルギーを温存できたことに満足だ。明日のステージは短く、花火のようにアタックが巻き起こるだろうからね」(フルーム、フィニッシュ後インタビューより)
フルームは12日連続のマイヨ・ロホ表彰式に臨み、総合2位ニーバリは55秒差につける。ケルデルマンは首位とのタイム差こそ変わらぬものの、生まれて初めての「総合表彰台圏内」に入った。ザカリンは2つ順位を上げて4位に、代わりに攻撃しながらも最後に崩れたチャベスが5位へと後退した。コンタドールはまたひとつ順位を上げ総合8位に、奮闘したロペスは10位で変わらなかった。ただ新人賞2位とのタイム差を2分28秒から5分08秒に開き、今大会の目標であった新人賞ーー残念ながらブエルタに新人賞ジャージはなく、白いジャージは複合賞のものーーへと向かって、さらに大きく前進した。
宮本 あさか
みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。
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