【ツールに恋して～珠玉のストーリー21選～】あくなき魂は罪を償い、再び男を蘇らせた。リシャール・ビランク、山岳に愛された男。

※本企画は2017年に実施されたものです。予めご了承ください。

世界中の自転車ファンを魅了して止まないTour de France。男たちの激闘の裏に隠されたHUMAN DRAMAに僕らは胸を打つ。ここに紡ぐ珠玉のストーリー21選があなたに届くとき、聞こえるのはきっと、ツールへの恋の予感。

【STAGE 17】山岳王歴代最多、リシャール・ビランク（フランス）

ツール・ド・フランスの山岳王を歴代最多の7回獲得しているリシャール・ビランクは、モロッコのカサブランカに生まれたフランス人だ。1991年にフランスのRMOチームでプロデビューし、1992年にツール・ド・フランス初出場を果たした。

1992年は「ピレネーなきツール・ド・フランス」と呼ばれた年で、序盤戦のピレネーでは標高1035mのマリーブランク峠しか越えなかった。そのステージでゴール手前まで独走したのが、まだ無名のビランクだった。有力選手に大差をつけてゴールしたことで、すべてのリーダージャージを独占。一躍人気者になった。

翌1993年から1998年まではフェスティナチームで走った。1994年にはピレネーの山岳ステージ、リュザルディダンで初優勝。そして初めての山岳賞を獲得した。1995年も山岳ステージのコトレを制し、山岳王に。1996年、3年連続の山岳賞と総合3位。そして1997年は4年連続の山岳賞と総合2位。

そして1998年のツール・ド・フランスを迎えた。ビランクはフランスのファンの期待を一身に受けた優勝候補だった。ところが開幕直前に暗雲が立ちこめた。アイルランドのダブリンがスタートだったこの年、スタート地点に向かったフェスティナの車両から血液ドーピングの機材が見つかった。