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サイクル ロードレース コラム 2017年6月28日

【ツールに恋して~珠玉のストーリー21選~】映画スターのように立ち振る舞ったイタリアきっての伊達男、マリオ・チポッリーニ

ツールに恋して~珠玉のストーリー21選~ by 山口 和幸
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そんなスーパーセクシーマリオだが、パリ・シャンゼリゼには一度もゴールしていない。ジロ・デ・イタリアでは完走してもツール・ド・フランスは完走していないということだ。

大型選手なのでアルプスやピレネーの上りを得意としていないこともあるが、チポッリーニの場合はちょっと確信犯だ。ツール・ド・フランスは序盤に平坦ステージが連続するのが定番であり、そこで区間勝利を荒稼ぎしてしまったら、山岳を前にして帰宅してしまうのだ。それというのも、イタリアに帰国しやすいステージを見計らったようにチポッリーニはやめてしまうのである。

その説を裏付ける証拠もある。

ツール・ド・フランスは総合優勝や区間優勝、各賞ジャージなどいくつもの栄冠があるが、23日間を走り抜いて世界で最も華やかなシャンゼリゼにゴールするというのも勲章である。だから力及ばずリタイアした選手には夢破れた悲壮感が漂う。

ところがチポッリーニにはそれがまったくない。リタイアした翌日にツール・ド・フランスのスタート地点にきらびやかな私服で登場し、若い女性に囲まれて映画スターのようにたちふるまっているチポッリーニを何度も目撃している。つまり「オレの仕事は昨日で終わったからお役御免さ」という感。

翌日には地元イタリアに戻り、つかの間の休養ののちに次のターゲットのために練習を開始する。それがプロなのだ。2002年にはこうして秋の世界選手権を制覇。名実とも世界最強スプリンターとしての名を轟かせることになった。

ジャージの色に合わせて自転車やアクセサリーをカラーコーディネートした最初の選手もチポッリーニだ。さらにはジュリアス・シーザーの衣装でスタート時のサイン舞台に登場したこともある。規則違反の特注ジャージは日常茶飯事。当然のように罰金が科せられるが、ファンが喜ぶのだからやめるわけはなかった。

引退するときも派手だった。2005年の春に引退記者会見を行い、その年のジロ・デ・イタリアの初日にド派手なピンク色のスキンスーツを着用して引退走行を行った。2008年に一時的に現役復帰したが、すぐに撤回。その後はチーム運営やフレームメーカーとしての経営に手腕を発揮。いまでもその豪快さとダンディーぶりは変わっていない。

代替画像

山口 和幸

ツール・ド・フランス取材歴25年のスポーツジャーナリスト。自転車をはじめ、卓球・陸上・ボート競技などを追い、日刊スポーツ、東京中日スポーツ、Number、Tarzan、YAHOO!ニュースなどで執筆。日本国内で行われる自転車の国際大会では広報を歴任。著書に『シマノ~世界を制した自転車パーツ~堺の町工場が世界標準となるまで』(光文社)。2013年6月18日に講談社現代新書『ツール・ド・フランス』を上梓。青山学院大学文学部フランス文学科卒。

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