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アナコナが仕事を終えると、総合6位ナイロ・キンタナが動く番だった。2日前に1分近くタイムを失い、「今後はバルベルデのサポートに回る」と宣言した2016年ブエルタ覇者は、残り13kmで鋭いアタックを繰り出した。チームミーティングで決めた「計画通り」だった。
ジョージ・ベネットに連れられて、総合5位ステフェン・クライスヴァイクが合流してきたのは、モヴィスターにとって好都合だったに違いない。そこまでアシストたちをたっぷり温存していたミッチェルトン・スコットが、いよいよ追走の責任を引き受けざるを得なくなったからだ。
いまだ2人のアシストを残していたサイモン・イェーツは、ジャック・ヘイグに先頭を引かせた。淡々と一定リズムで登り、即時に危険にはならない2人とのタイム差を、静かにコントロールするに留まっていた。
ところが、残り11.5kmで、今度はピノが前方へと飛び出した。フレンチクライマーが区間狙いなのは明らかだった。総合ではすでに5分半以上も遅れており、首位の座はもちろん、総合表彰台争いさえ脅かすことのない選手を、つまりわざわざ追いかける必要など一切なかった。しかしピノの強さも知っていた。コバドンガの山頂で勝った時など、サイモンは思わずインタビューで絶賛したほどだ。
つまり同伴者として、ピノは理想的だった。なによりサイモンは、脚の調子が極めて良かった。
「すごく調子が良かった。そして調子が良い時には、トライすべきなんだ。今日は特にプランはなかった。ただチームや僕がどんな調子なのかを把握しつつ、冷静に、制御に務めるつもりだった。だから数人が飛び出していった後、ヘイグと共に制御を続けた。でもあまりに僕の調子が良いものだから、自分にふさわしいタイミングを待って、それから飛び出した」(サイモン・イェーツ)
3年前からアンドラで暮らし、山道を完璧に知り尽くしていたイェーツにとって、「自らのタイミング」は残り10kmのアーチの下だった。マイヨ・ロホはアタックを打つと、あっという間に前を行く4人に追いついた。
「まさかサイモンが追いかけてくるとは思わなかった」と、ピノもクライスヴァイクも驚いた。おそらくモヴィスターにとっても予想外だった。アレハンドロ・バルベルデは動けなかった。慌ててリカルド・カラパスが牽引に乗り出したが、どんどん引き離されていくばかり。38歳大ベテランの非常事態に、あろうことか、キンタナが前から呼び戻されてしまう。
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