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「それでも無理なものは無理なんだ、と腹をくくって、とにかく全力を尽くした。上り切った地点で、戦いがほぼ決することは分かっていた。そこから先は、タイムを失ったとしても、ほんの1、2秒程度でしかない。だから序盤に全精力を注いで、後は出来るだけ速くフィニッシュへとたどり着くよう努力した」(デニス)
望み通りにデニスは中間計測地点を5秒リードで首位通過すると、その後はタイムを失うどころか、テクニカルなダウンヒルでさらに1、2秒を稼いだ。フィニッシュラインでは9分39秒の圧倒的なトップタイムを叩きだし、念願のブエルタ区間初勝利を手に入れた。つまりは2015年ツール初日個人タイムトライアル、2018年ジロの第16ステージ個人タイムトライアルに続く、3大ツール個人タイムトライアルステージ全制覇を成し遂げた。
3大ツールの全総合リーダージャージ着用という快挙なら、すでに2015年ツールの黄、2017年ブエルタの赤、2018年ジロのピンクで達成済み。ただし2年連続でブエルタ初日にリーダージャージを手にするのは、1975年以来の離れ業!
「初日にこうして再びジャージを着られるなんて、素敵な気分だよ。今日を逃したら、この先でマイヨ・ロホを取るのはかなり難しいだろうと考えていた。だから今日が、僕にとっては、唯一のジャージ獲得チャンスだった。たとえ明日ジャージを失っても、何の問題もない。……クヴィアトコウスキーはどうやら絶好調のようだから、明日の終わりにはジャージを着ているんじゃないかな」(デニス、優勝後インタビューより)
たしかに翌日には、平坦ステージと言う名の上りフィニッシュが待っている。最終登坂は7.5km。6秒差など簡単にひっくり返せる距離だ。しかもステージ上位3選手には、最大10秒のボーナスタイムもついてくる。
宮本 あさか
みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。
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