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「ずっと心の底からツールの区間勝利が欲しかった。走りながら今まで積んできた練習や、家族のことを考えた。病気の父のことも。父がTVでレースを見ているに違いないと思えば、僕もどれだけだって苦しみを耐えることが出来た。でも、まあ、僕は苦しむのが好きなんだ。今日はだから思いっきり苦しんだ」(アラフィリップ、公式記者会見より)
祖国フランスに2018年ツール区間1勝目をもたらしたアラフィリップは、フィニッシュラインで力強く胸を叩いた。熱い涙も流した。自身にとっても初めてのツール区間優勝だった。また今区間5つの山岳のうち4つで先頭通過を果たし、山岳ジャージを身にまとった。
ロム峠で勝利へ向けたアタックが勃発する瞬間まで、先頭集団で粘り続けたヴァンアーヴェルマートは、その後も驚異的な走りを見せた。アラフィリップから1分44秒遅れでステージを終え、望み通りあと1日、マイヨ・ジョーヌを着用する権利をもぎ取った。むしろ逃げ切り効果で、総合2位以下に対するリードを、43秒から2分22秒へと拡大した。
「あと1日、追加でマイヨ・ジョーヌを着ることが出来ることだけで、すでに満足だよ。ただ明日のステージはすごく難しい。とにかく僕には難しすぎる。ジャージを守るチャンスは『ゼロ』だ」(ヴァンアーヴェルマート、公式記者会見より)
後方のメイン集団は、ほぼ1日中、スカイが淡々と、かつ高速で制御を続けた。前方へと飛び出す攻撃は何一つなく(ラ・コロンビエールの山頂間際のダニエル・マーティンの加速のみ)、むしろ後方から、じわじわと弱者が振り落とされていった。
中でも昨大会2位のリゴベルト・ウランが、リズムについて行けなくなった。第9ステージの落車の影響か、背中や膝の痛みに苦しんだ。大多数の総合有力選手がアラフィリップから3分23秒差の小さな集団でフィニッシュした一方で、ウランは5分59秒差。つまり2分36秒ものタイムを失い、総合でも昨大会覇者フルームからの遅れは3分47秒に拡大している。
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宮本 あさか
みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。
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