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ティム・アンダーソン
MLB機構は、差別的な発言のあったヤンキースのジョシュ・ドナルドソンに1試合の出場停止と罰金(金額は明らかにされていない)を宣告した。本人は、その発言に対しては謝罪しつつも処分は不服として提訴したが(その後故障者リスト入りした)、ファンやメディアの反応は彼に対し極めて厳しい。
ドナルドソンは、現地21日、本拠地ヤンキー・スタジアムでのホワイトソックス戦で、同軍の黒人遊撃手ティム・アンダーソンに対し、「よう、ジャッキー」と複数回呼びかけたという。その後ドナルドソンは、5回裏の打席でホワイトソックスの捕手ヤスマミ・グランダルとこのことで口論になり、両軍ベンチから選手が飛び出し揉み合う事態となった。
ここでいう「ジャッキー」とは、もちろんMLBの人種の壁を破り、1947年にドジャースでデビューしたジャッキー・ロビンソンのことだ。彼の背番号42はメジャー全球団で欠番となっている。アンダーソンをそんな偉大な人物になぞらえて呼ぶことがどうして差別的なのか、どうもピンと来ないという日本のファンは多いかもしれない。
ドナルドソンによると、アンダーソンを「ジャッキー」と呼んだのは、2019年にアンダーソンがメディアのインタビューで「おれは現代のジャッキー・ロビンソンだ」と発言したことを踏まえてのことらしい。実際、アンダーソンは、球界の旧弊な慣習に対し率直に反対意見を発し、経済的に恵まれない層へのチャリティにも熱心に取り組んでいる。拡大解釈するなら、MLBのみならずアメリカ社会全体の差別と戦ったジャッキーの現代版と言えなくもない。
それでも、本件が問題になったのは「ジャッキー」を黒人の象徴としての表現と捉えることもできるからだ。
アンダーソンは、首位打者獲得(2019年)、シルバースラッガー受賞(2020年)、球宴選出(2021年)を誇るメジャーを代表するプレーヤーだが、そうであるか否かを問わず、ある人物を形容する際にまず「人種」から入るのは、国際社会では極めて不適切とされている。人は人種や民族、宗教、国籍よりもその人物の能力や実績、人柄で認識、評価されるべきなのだ。また、その対象の人物がアメリカで今も根強く残る人種差別の対象となっているアフリカ系であるならなおさらだ。これは、白人の強打者に対し「よう、ベーブ(ルース)」と声を掛けることとは根本的に異なる。
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