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そうなると、根本的な状況は蜜月時代と変わらないことになる。
それでも、現在のようににっちもさっちも行かない(ように見える)状況を招いたのは、実はこの数年に関しては、労使は拡大するパイを分けあっていたというのは幻想に過ぎないことが明らかになったからだ。
2011年から19年にかけて、MLB総収入は63億ドルから107億ドルへと1.7倍に膨れ上がった。選手の平均サラリーも、約310万ドルだった2011年を基準にすると、16年には1.4倍の約438万ドルとなったが、その後は足踏み状態が続いている。その背景には、労使協定で合意される戦力均衡税免除の上限が1億7800万ドルから2億600万ドルと16%しか上昇していないことも影響している。
われわれ庶民からすると、それでもMLBプレーヤーはとてつもない大金持ちであることに変わりはないが、彼らは相対的にはビジネス規模の拡大に見合う恩恵には浴していないのだ。そうなると、前述の超大型放映権契約もオーナー達の懐を潤すだけではないか、と選手たちが疑心暗鬼になっても致し方ない。
では、なぜ拡大するパイを分け合う方向で交渉しないのか。その理由は、両陣営トップの資質やバックグラウンドにもありそうだ。
選手組合専務理事のトニー・クラークは、13年に死去した前任のマイケル・ウェイナーの後を受け、16年に就任した。しかし、クラークは選手出身でハードな交渉は得意分野ではない。就任後間もない16年の協定更新時には、その弱腰ぶりが再三指摘された。したがって、今回も早い段階から協調姿勢を見せては失格の烙印を押されかねない立場にある。
一方のロブ・マンフレッドMLBコミッショナーはどうだろう。本来、コミッショナーは「仲裁者」であるべきだ。しかし、もともとMLB機構の顧問弁護士だった彼は、オーナー側にべったりだ。それでありながら、前任のバド・シーリグほどの狡猾で強引なまでの政治力は持ち合わせていないように思える。
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