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他球団の試合観戦に赴き、選手のデータ集積や分析などの仕事を行うスコアラーには、岩本貴裕の名前があります。広島市東区出身で広島商業高校卒の岩本は、“がんちゃん”の愛称で地元では特に愛された選手でした。広島商ではエースで4番として甲子園に出場。亜細亜大学に進学し、東都大学リーグを代表するスラッガーとして2008年ドラフト1位で、相思相愛だったカープに入団しました。
当時のチームは新井貴浩が阪神に移籍した直後で、プロ2年目の2010年には14本塁打をマークするなど、栗原健太とともに次代の4番打者として期待されました。しかし、好不調の波が激しく、なかなか結果が残せない状態が続き、結局、規定打席到達したシーズンがないまま、2019年限りで現役生活に幕を閉じました。
プロ11年間の通算成績は打率.253、31本塁打、131打点でしたが、毎年のように夏場の1ヶ月間など、短期間に驚異的な爆発力を見せる時期があり、今度こそはと何度も夢を見させる選手でした。個人的に最も印象に残っているのは、チームが初のクライマックスシリーズ進出を果たした2013年。阪神とのファーストステージの初戦、9回に代打でダメ押しの3ラン本塁打を放ち、ファイナルステージ出場に貢献した試合でしょうか。
温和な性格で誰からも愛されたキャラクターでしたが、打撃コーチとして数々の名選手を育てた内田順三氏の「指導者として最大の後悔。名球会級の才能だった」という言葉は、多くのファンも同じ気持ちだったのではないでしょうか。
その他にも、編成・ファーム担当部長には山根雅仁、一軍担当マネージャーには篠田純平と、かつてのドラフト1位選手の名前があり、他にも「あー、あの選手が」という人たちが大勢います。もっと紹介したいところですが、長くなってしまったので、反響でもあるようならまた別の機会に、ということで今回は終わりにしておきます。
文:大久保泰伸
大久保泰伸
フリーライター、編集者。1969年広島市生まれ、現在は神奈川県在住。出版社勤務を経て、20世紀の終わり頃に独立。別冊宝島野球シリーズの執筆、編集や広島などのOBの著書の編集協力などを行い、同社のプロ野球選手名鑑は創刊時から現在まで関わる。記者活動は2009年にベースボール・タイムズ紙の広島担当でスタートし、15年から野球専門サイトのフルカウントで広島、18年からはDeNA担当も兼務した。
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