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世はセイバーメトリクス全盛期だ。その観点からは、打率より出塁率に注目すべきであり、勝負強さよりも運に左右される打点などは評価に値しないということになってしまう。実際、プレーヤーとしての総合的な価値を示すWARでは、この年のカブレラをマイク・トラウト(エンジェルス)は遥かに上回っていた。
それでも、2012年のア・リーグMVPに、トラウトではなくカブレラが選出されたのは良いことだったとぼくは思っている。同年ア・リーグのいわばMan Of The Yearは、やはりあり得なかったはずの三冠王を達成したカブレラだと思うからだ。
彼は1999年に16歳でマーリンズと契約し、2003年に20歳でメジャーデビューしている。初本塁打はサヨナラ弾で、主として4番打者としてその年のチームのワールドシリーズ制覇に貢献した。翌2004年には、日米野球で来日している。この頃はまだ少年のあどけなさが残る顔つきだった。
2004年から2007年までは4年連続で球宴に選出される大活躍だったが、2007年12月、マーリンズお家芸?のファイヤーセールでタイガースに移籍する。
移籍後の2011〜13年はキャリアのピークだった。2012年は前述の自身の三冠王に加えチームはア・リーグ優勝を果たした。2012〜13年は連続MVP。タイガースの観客動員も両年とも300万人を超えた。
しかし、34歳の2017年シーズンからは、故障に苦しみ欠場が多くなる。チームも低迷が続き、2014年3月に締結したカブレラとの最低10年2億9200万ドル(約321億円)の契約が再建の妨げとなっている面は否定できない。しかし、30代中盤から選手が衰えるのは致し方ないことで、プーホルスもあのケン・グリフィー・ジュニアも同様だった。契約は選手と球団の合意があって初めて成り立つものだ。カブレラを批判するのは筋違いだろう。彼は、その契約の最終年となる2023年限りで引退するかもしれない。いずれにせよ、引退後5年を経て資格を得れば、初年度に殿堂入りするだろう。
文:豊浦彰太郎
豊浦 彰太郎
1963年福岡県生まれ。会社員兼MLBライター。物心ついたときからの野球ファンで、初めて生で観戦したのは小学校1年生の時。巨人対西鉄のオープン戦で憧れの王貞治さんのホームランを観てゲーム終了後にサインを貰うという幸運を手にし、生涯の野球への愛を摺りこまれた。1971年のオリオールズ来日以来のメジャーリーグファンでもあり、2003年から6年間は、スカパー!MLBライブでコメンテーターも務めた。MLB専門誌の「SLUGGER」に寄稿中。有料メルマガ『Smoke’m Inside(内角球でケムに巻いてやれ!)』も配信中。Facebook:[email protected]
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