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名城大の先発松本投手
いつも、あと一息で勝利を手繰り寄せられずにいた福井工大が、今シーズンは見違える打撃力を持って見参だ。
「地元福井での調整がうまくいっていましたよ」
と、ふくよかなウエイトを揺らしつつ、ほがらかに語る福井工大の下野監督だ。
その監督から指示を受ける選手達もほのぼのとしながら。いや、これはいつになくまとまりがあるチームになったとの思いを強くした。
試合開始直後から、四球やデッドボールで塁に出るとバントで送るスタイルはそのまま上位打線には思い切り振らせる。そしてずいぶんと走り回る。
どちらのチームもベンチからよく声が出ていた。
10大会連続43回目出場の福井工大に、15年ぶり5回目の出場で打撃好調な名城大が、がっぷりよつに組んでいた。
バックスクリーンへ本塁打の指名打者大川(名城大)
初戦で満塁本塁打を放った福井工大3番指名打者の長峯(豊橋中央)はマークされ、名城大7番指名打者の大川(三重)がバックスクリーンへの3ランなど、ともにこの試合において、ホームランを含む長打攻勢で突き進むのだから面白い。
継投2番手で好投した南大(福井工大)
準々決勝まで進むと、エースをはじめ投手陣に疲労が蓄積、こうなると継投策となるのだが、そのつなぎのタイミングが難しさを帯びてくる。
それで初回から毎回得点で10点をあげて福井工大が逃げ切りかと思いきや、分厚い布陣の名城大は4点差まで持ち返しての終盤。
肩にデッドボール受けた指名打者長峯(福井工大)
途中、右肩にデッドボールを受けて痛そうにした長峯に、コーチが『ここかな痛いところ、さすってやるから』とそういう和やかなシーンも見られた。
全日本大学野球選手権2021
【ハイライト】名城大学 vs. 福井工業大学
乱打戦けっこう。最多四死球は15個になり激しく打ち合い最後に勝ち切る、これこそ王道であろう。
緊迫した投手戦も良いが、このような猛烈な打ち合いもまた楽しい。
俊足強打の伊藤(福井工大)
最終9回表には8番打者の伊藤(筑陽学園)がセンターを抜くランニング満塁本塁打で、14得点からさらに3点追加して17-8のスコア、大会最多タイ記録の17点!そういう勢いに満ちあふれた福井工大がベスト4に進んだ。
「試合が終わった瞬間はもう、やれやれと、でした。乱打戦の打ち合いですね。名城大はオープン戦で打たれて負けている相手でした。それを突き放して勝てたのは、選手が成長した証しです。次の準決勝も我々が得意とする先行逃げ切りのスタイルでいきます」
長い試合の打撃戦に勝利して、ようやくほっとした表情をみせた下野監督だった。
文・写真/岩瀬孝文
岩瀬 孝文
ノルディックスキージャンプの取材撮影は28年以上、冬季五輪は連続5回、世界選手権は連続12回の現地入り取材。スキー月刊誌編集長を経て、2007札幌世界選手権では組織委員会でメディアフォトコーディネーターを務めた。 シーズンに数度J SPORTS FIS W杯スキージャンプに解説者として登場。『冬はスキー夏は野球』という雪国のアスリートモードにあり、甲子園の高校野球や大学野球をつぶさに現場取材にあたっている。
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