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したがって、3人とも来年も見通しは極めて厳しいのだけれど、これでジ・エンドかと言うとそうではない。殿堂入りには別ルートもある。
BBWAA選出とは別に、少人数からなる「時代委員会」が過去の歴史を4つに分け、一定のサイクルで各時代ごとにまだ殿堂入りしていない名選手を拾い出し選出しているのだ。なお、BBWAAは選手のみを対象としているが、こちらは審判、監督、経営者もカバーしているので、単なる敗者復活戦ではない。
ボンズら3人は、時代委員会の4つのカテゴリーのうち、1988年以降を対象とする「Today’s Game」でその資格が吟味されることになる。時代委員会経由でも75%以上の得票を必要とするが、400名前後が投票するBBWAAとは異なり、こちらはわずか16人。しかも投票一本ではなく、その前にしっかり審議も行われる(そのため、2021年度の選出は新型コロナ感染拡大回避のため見送られた)。
元選手の選出が、BBWAAと時代委員会の二段構えになっている意義としては、時間の経過とともに変化する価値観や選手の評価基準への対応が挙げられる。比較的近年では、セイバーメトリクスの発達と浸透により、殿堂入りボーダーラインもかつてのような「打者は3000本安打か500本塁打」というような画一的なものではなくなっている。また、後年の統計の専門家が、ステロイド時代の異常な成績を公平に評価する手法を見出すかもしれない。
歴史観の変化もあるかも知れない。ボンズらがステロイドを使用したことはほぼ確実だが、MLBで禁止薬物に指定されたのは彼らが手を染めた後の話だ。また、薬物検査で陽性反応を示したことはない。一方で、すでに殿堂入りしている者の中にも、マイク・ピアッツア(2016年)、ジェフ・バグウェルとイヴァン・ロドリゲス(ともに2017年)、など現役時代から薬物使用の噂がついて回った者もいる。いや、ボンズなどはそもそも薬物を使用し始めたとされる90年代末以前から、すでにパワー&スピードで殿堂入りに相応しい成績を挙げていた。後年、ステロイドボーイズたちを再評価しようという動きが出てくる可能性はある。
シリングにしても、そもそも殿堂入り資格の有無はフィールド上の業績だけで判断すべきで、そこに「人格」を持ち込むべきではないという意見もある(規定上は、人格も入っている)。
いずれにせよ、時代委員会は、重い課題を受け継ぐことになりそうだ。
文:豊浦彰太郎
豊浦 彰太郎
1963年福岡県生まれ。会社員兼MLBライター。物心ついたときからの野球ファンで、初めて生で観戦したのは小学校1年生の時。巨人対西鉄のオープン戦で憧れの王貞治さんのホームランを観てゲーム終了後にサインを貰うという幸運を手にし、生涯の野球への愛を摺りこまれた。1971年のオリオールズ来日以来のメジャーリーグファンでもあり、2003年から6年間は、スカパー!MLBライブでコメンテーターも務めた。MLB専門誌の「SLUGGER」に寄稿中。有料メルマガ『Smoke’m Inside(内角球でケムに巻いてやれ!)』も配信中。Facebook:[email protected]
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