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アンダーソンは、レギュラーシーズンでは防御率0.55、WHIP0.49と完璧な投球を披露したがポストシーズンに入ってから調子を崩し、地区シリーズから6登板連続で失点していた(結果的には7連続になったわけだ)。もはや絶対的な存在ではなかったのだ。したがって、たとえfangraphsが指摘するようにスネルに疲れの兆候が見えたとしても、「アンダーソンへの継投」よりは「スネルの続投」がベターで、交代させるにしても、あの場面ではアンダーソンではなく他の勝ちパターンでの駒であるディエゴ・カスティーヨ、またはピート・フェアバンクスにすべきだったと思う。
実はこのゲームでは、その後もキャッシュ監督のやや不可解な継投があった。
1点ビハインドの7回頭から、キャッシュはフェアバンクスを起用した。彼はピンチを招きながらもなんとかこの回を無失点で乗り切った。21球を投じていたが、8回も引き続きマウンドに登った。これ自体は不思議ではない。フェアバンクスはイニング跨ぎは珍しくないし、8回の先頭打者はベッツで、その後左打ちのカイル・シーガー、1人置いてまた左打ちのマックス・マンシーとなるからだ。右打ちのベッツまでで右腕のフェアバンクスはお役御免とし、左腕にスイッチするものと思われた。そして、フェアバンクスはベッツに痛い、痛い一発を喰らった。それでもまだ2点差だ。しかし、キャッシュはここで投手交代は行わなかった。フェアバンクスはシーガーを歩かせたが、続く右打ちのキケ・ヘルナンデスを三振に打ち取った。そして、マンシーを迎えたところでキャッシュはレフティのライアン・ヤーボーへスイッチした。ヤーボーはマンシーを併殺に打ち取りイニング終了となったのだが、釈然としなかった。ヤーボーを投入するなら、なぜシーガーの場面でなかったのだろう。
試合後も6回の「スネル→アンダーソン」に関するモヤモヤが拭い去れなかったのは、この8回の理解に苦しむ継投により、一層キャッシュ采配に懐疑的になってしまったからかもしれない。
ともあれ、全てが例外的だった2020年MLBは幕を閉じた。これからファンにとっては長いオフに入るが、その間の絶好の「たら、れば」議論のネタを提供してくれたと思う。
文:豊浦彰太郎
豊浦 彰太郎
1963年福岡県生まれ。会社員兼MLBライター。物心ついたときからの野球ファンで、初めて生で観戦したのは小学校1年生の時。巨人対西鉄のオープン戦で憧れの王貞治さんのホームランを観てゲーム終了後にサインを貰うという幸運を手にし、生涯の野球への愛を摺りこまれた。1971年のオリオールズ来日以来のメジャーリーグファンでもあり、2003年から6年間は、スカパー!MLBライブでコメンテーターも務めた。MLB専門誌の「SLUGGER」に寄稿中。有料メルマガ『Smoke’m Inside(内角球でケムに巻いてやれ!)』も配信中。Facebook:[email protected]
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