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「引退試合はなかったけれど、こんな形で終わることができたのは幸せなことです」。
今江敏晃が、18年間の現役生活にピリオドを打った。ファン感謝祭の大トリで、引退セレモニーが開催。多くのファンが見守るなか、挨拶のスピーチを終えた今江は、四方に向かって深々とお辞儀をした。チームメイト代表として岡島豪郎と岸孝之が花束を贈る。
◆サプライズ、現役最後の打席は息子との勝負
そして家族から。妻の幸子さんが花束を贈ると、14才の息子の陸斗(りくと)くんは、今江にバットとヘルメットを手渡した。
「お父さん、最後にぼくと1打席、勝負してください」。
今江は驚きを隠せないまま。すると、じゃあと捕手役に嶋基宏が名乗りをあげ、球審をサンドウィッチマンの伊達みきおさんが務めた。残りの選手は、全員でフィールドを守った。
場内に登場曲の「青い春」(back number)が大音量で流れ、スタジアムMCの千葉正人さんが高らかに今江の入場を告げる粋な演出。大いに湧いたムードのなか、陸人くんが放った初球は、父の胸をかすめた。
温かくも、どよめく場内。これでスイッチが入ったのか、今江はいつもと変わらぬ雰囲気を漂わせて再び打席に入ると、陸人くんの2球目を、きっちりとセンター前に弾き返した。
この後の囲み会見で、初めて息子のボールを打席で見たという今江は「よくストライクを放れたな。ちゃんと投げられるようになったんやな」と目を細めた。
今江の公式サイトには、陸人くんが2才の頃にバットとグローブを持って戯れている写真があるが、18年もプロ野球の第一線で活躍してきたのだ。成長期に過ごせた父子の時間の少なさは察するにあまりある。
密かに、「父子で現役」という夢も抱いていたという。今江は「やっぱり現実は甘くない」と苦笑いし、スピーチでも自身のブログでも「父親らしいことが全然できなかった」と振り返る。
とはいえ、18年という歳月はトップ選手のなかのトップ選手しか成しえないこと。どんな時も甘んじることなく反省と努力を続ける今江の背中はきっと、変わらず偉大だろう。
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