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「ストも辞さず」の闘うリーダー
また、ミラーは強硬な活動家で目的達成のためにはストライキも辞さず、のスタンスを貫いた。前述の1972年のストだけでなく、1981年シーズン中には、2ケ月近くにおよぶストライキを断行し、彼自身も多くの批難に晒された。
ミラーがそこまで豪腕な労働運動家となったのは、自身の生きた「時代」の影響が大きいように思える。
彼は、アメリカが第一次世界大戦に参戦しソビエト連邦が誕生した1917年に生まれている。アメリカ国内ではT型フォードの生産が最盛期を迎え、軍需にも支えられた工業は急成長。それに伴う労使の衝突が頻発した。そして、第二次大戦後は「アカ狩」のマッカーシー旋風が猛威を振るう。
要するに、ミラーの育った時代、そして青年期や働き盛りの時期を過ごした時代は工業がアメリカを支えていた時代で、強烈な労働運動家を輩出する土壌があったのだ。その意味では、彼は時代の象徴だった。
また、彼の自伝にも出てくるのだが、ミラーが最も恐れたのが「オーナー達が毎年オフに全選手にFAとなる権利を与えること」だった。一般的に、「オーナーは選手を長く拘束するためFA権取得を少しでも遅らせたい」と考えがちだ。
しかし、これはミラーの思うつぼでもあった。
なぜなら彼は「毎年全選手がFAとなれば、一時的に選手の供給は過剰となり、契約先を確保したいあまり買いたたかれる選手が続出。結果的に平均年俸は押し下げられる」と考えていたからだ。彼の言葉によると「最後までオーナー達はこれに気付かなかった」(ミラーの理論が経済学的に正しいかどうかは別だ)。
ミラーはいまだ殿堂入りの栄誉に浴していないのだが、彼の在位期間のコミッショナーである好敵手のボウイ・キューンは、死去の翌年(2008年)に殿堂入りしている。
もっとも彼自身は、殿堂入り候補に自分をノミネートするのを止めるよう選考委員会(ベテランズ委員会)に訴えていたそうだ。反骨精神こそ彼の活力の源泉だった。
果たして、今回はどうだろうか。
文:豊浦彰太郎
豊浦 彰太郎
1963年福岡県生まれ。会社員兼MLBライター。物心ついたときからの野球ファンで、初めて生で観戦したのは小学校1年生の時。巨人対西鉄のオープン戦で憧れの王貞治さんのホームランを観てゲーム終了後にサインを貰うという幸運を手にし、生涯の野球への愛を摺りこまれた。1971年のオリオールズ来日以来のメジャーリーグファンでもあり、2003年から6年間は、スカパー!MLBライブでコメンテーターも務めた。MLB専門誌の「SLUGGER」に寄稿中。有料メルマガ『Smoke’m Inside(内角球でケムに巻いてやれ!)』も配信中。Facebook:[email protected]
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