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まずは配球だ。ダルビッシュといえば大きく、鋭く変化するスライダーが武器だが、6月以降はその比率を減らし、その分カットファストボールを多用しているという。確かにこれは分かりやすい。変化の大きなスライダーはその分ストライクゾーンを外れる可能性も高いが、カッターは微妙な変化でバットの芯を外す球種であり、ストライクゾーンに集めやすい。
もうひとつは、ストライクゾーンの四隅を執拗につくのではなく、結構真ん中にポンポン投げ込んでいることだという。
これはある意味「吹っ切れた」ということだ。真ん中周辺にタマを集めることはリスクもある。しかし、それをあまり気にせずのびのびと勢いのあるタマを投げることを重視する。甘いコースに投げているのだから結果的に被弾も多くなるが、それは仕方ないことと捉えているのかもしれない。
7月以降四球が激減していることは日本でもかなり報じられているが、実は被本塁打の多さは相変わらずで、むしろそれ以前よりも増えている。前述の四球と同じスパンで9回平均の被本塁打数をチェックすると、5月末時点で1.62、6月単月は2.15、7月以降は1.89だ。これは一流投手としてはかなり多い部類だ。
しかし、全体で見れば投球内容が改善されていることは間違いない。このスタイルチェンジは少なくとも現時点では功を奏している。
突然四球が減ると「急に制球力って改善されるものなのか」という疑問が湧く。しかし、日本では「制球力」で括られてしまうが、アメリカでは「コントロール」とはストライクを取る能力で、狙ったスポットに投げ込む能力は「コマンド」と呼ばれ、別のスキルとして区別される。
したがって、ダルビッシュの場合は「コマンド」に必要以上に気を遣いすぎることを避け「コントロール」を重視した投球を展開している、と解釈することは可能だと思う。
いずれにせよ、先日の米記者とのツイッター上での配球と被本塁打の関係に関するやりとりでも感じられる通り、彼は聡明でその思考はロジカルだ。加えて、決断力と勇気のあるアスリートだと言って良いだろう。
<数字は全て、現地時間8月28日時点>
文:豊浦彰太郎
豊浦 彰太郎
1963年福岡県生まれ。会社員兼MLBライター。物心ついたときからの野球ファンで、初めて生で観戦したのは小学校1年生の時。巨人対西鉄のオープン戦で憧れの王貞治さんのホームランを観てゲーム終了後にサインを貰うという幸運を手にし、生涯の野球への愛を摺りこまれた。1971年のオリオールズ来日以来のメジャーリーグファンでもあり、2003年から6年間は、スカパー!MLBライブでコメンテーターも務めた。MLB専門誌の「SLUGGER」に寄稿中。有料メルマガ『Smoke’m Inside(内角球でケムに巻いてやれ!)』も配信中。Facebook:[email protected]
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