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人間は緊張し、交感神経が働くと血管が収縮する。登板前ブルペンで胸の高鳴りを感じる度に、藤嶋は椅子に腰を下ろしリラックスに努める。少しだけ冷たくなりかけている手を気にしながら目を閉じ、深呼吸をする。
今、藤嶋が1軍マウンドで投げているのは奇跡に近い。右手血行障害。現役続行さえ危ぶまれた。
2度の手術をした。1度目はカテーテル手術。血管からバルーンを入れて障害が起きている血管を膨らませ血流を作る。しかし、思ったような結果は出なかった。
藤嶋は「失敗ですね。変わらなかった。まあ、ショックでしたね。どうしたらいいんだろうって。もう、野球終わりかなって思ったりもしましたね」。
2度目の手術は筋膜切開。障害が起きている血管に直接施すものでなく、その血管の周りの血流を促すアプローチだった。
藤嶋の右腕は蓄積疲労により、筋膜が張り裂けそうなくらい引っ張られていた。それも血流が悪くなっている要因だった。
写真にもあるように右腕を4か所切開し張り裂けそうな筋膜に切り込みを入れた。成功だった。
藤嶋は「ドクターが言うには皮が裂ける直前のソーセージのような状態だったと。切り込みをいれて筋肉がほぐれる状態を作り血流を促すオペでした」と説明した。
「障害が起きている血管自体は変わってないんです。その周りの血流を促すことでカバーしている状態ですね」と話す。
まだ半年前の出来事だ。ここから現在、藤嶋の1軍での成績は14試合14回2/3イニング。4安打、防御率はなんと0.00。まだ点を失っていない(8月14日終了時)。
藤嶋は「結果はたまたま付いてきているだけだと思っています。ただ、春の時点では自分でも想像できませんでしたね」。
「大きく変えた部分はないんです。キャンプもやっていないので色んなプランはありましたが、全部白紙です。トレーニングは続けていましたから、身体は変わったと思います」と話す。
得意球のスプリットはあるものの、代名詞のボールはない。そんな藤嶋を不思議に思っていると、ドラゴンズを引退した伝説のストッパー岩瀬仁紀氏にこう聞かれた。
「なぜ、藤嶋が結果を出していると思う?」。返答に苦しんだが、岩瀬氏はこう説明した。
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