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登板間のブルペン=投球練習は通常、登板日の3日前に行われる。ダルビッシュの登板が予想された2戦目は30日の土曜日なので、ブルペンに入るのはその3日前の水曜日でなければ理屈に合わない。木曜日にブルペンに入るのなら、登板日はその3日後の31日の日曜日になってしまう。当然、「ん? だったら3番手じゃないか!」となるわけだ。
ついでに書いておくと、アメリカ人記者は我々のように日本人選手だけをカバーしているわけではないので、ダルビッシュがブルペンを3日目に行うこともあるという事実を知らない。
『いったい、どうなってんだ?』という表情を浮かべているアメリカ人記者を横目に、ダルビッシュが日本人記者向けの囲みにやって来る。
してやったりのダルビッシュが混乱するアメリカ人記者たちの方を笑って振り向く。
そこでようやく、煙に巻かれた記者たちが「やられた」と気づき、そこでもまたドッカーンと笑いが起きる。
一歩間違えれば誤解を生むようなやり取りも、相互信頼がある今では単純な「笑い」に変わる。そういった異文化間(と呼ぶのも不自然なぐらいの)コミュニケーションが、ダルビッシュと彼を取材するアメリカ人記者の間で、今では普通に行われている。
とくにテレビやラジオの関係者は、ダルビッシュの「英語会見」を他の誰より歓迎している。
本人が話す「画像」や「音声」があったところで、日本語をそのまま流すことはできないし、通訳の言葉をそのまま番組で流しても視聴者=ファンは親近感を感じない。
ダルビッシュの英断によって「言葉の壁」が取り払われた今、野球場に行けず、テレビやラジオでしかカブスに接することができないファンにとって、ダルビッシュの「肉声」を聞くことで、一気に距離が縮まるのだ。
そして、それを可能にしたのは、本人の「勇気」と日常的な「努力」の賜物である。
完璧じゃなくてもいい。
とりあえず、やってみることー。
英語に限らず、何かにチャレンジする時に、もっとも大事なことではないかと思う。
キャンプ初日、初めての「英語会見」を終えた彼が、「やっぱ緊張するわー」と話していた頃が、もはや懐かしい今日この頃である。
ナガオ勝司
1965年京都生まれ。東京、長野、アメリカ合衆国アイオワ州、ロードアイランド州を経て、2005年よりイリノイ州に在住。訳書に米球界ステロイド暴露本「禁断の肉体改造」(ホゼ・カンセコ著 ベースボールマガジン社刊)がある。「BBWAA(全米野球記者協会)」会員
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