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たとえば現役を長くやることについて。
「ひとことで言えば、『幸運』だね。ミズーリ州の小さな町に生まれて、高校時代はチームから外れたことだってあるぐらいなんだ。ドラフトだって38巡目(全体1,139番目指名)だし、そんなに期待されてるわけじゃなかった。マイナーでやってる時から周りにはすごいやつがいっぱいいたけど、ストライクを投げることだけは自信があって、結局はそれが自分の武器になった。だから、この年になって、デブになっても野球をやってるのさ」と当時36歳のバーリーは笑いながら、自分の腹をさすった。
とにかく、ユーモアのセンスがある人だった。
ホワイトソックスのキャンプ場がまだアリゾナ州のツーソンという場所にあった頃、クラブハウスの出口に2005年のワールドシリーズ開幕戦で両チームの選手たちが勢ぞろいしている写真が飾ってあった。それを何気なく眺めていると、バーリーは背後からやって来て井口の写真を指差し、「これがどれぐらい大きな舞台なのか、分かってないみたいだ」と笑った。そうかと思えば、小柄なスコット・ポッセドニックを指差すと「不時着して地球人に拉致された宇宙人みたいだ」と際どいことを言う。
バーリーにそういうキケンなことを言うのが許されるのは、現役時代の彼が素晴らしい選手だったからだけではなく、自分の写真を指差し、自らを嘲笑うことも忘れないからだろう。
「そして、こいつはデブなのに誘惑に負けて、毎朝ドーナッツばかり食べている男だ」。
投手バーリー対イチローのホームラン競争。もしも実現すれば、きっと気の利いたコメントが2人の口から飛び出して、それを見た人たち全員が笑顔に包まれることになる―。
ナガオ勝司
1965年京都生まれ。東京、長野、アメリカ合衆国アイオワ州、ロードアイランド州を経て、2005年よりイリノイ州に在住。訳書に米球界ステロイド暴露本「禁断の肉体改造」(ホゼ・カンセコ著 ベースボールマガジン社刊)がある。「BBWAA(全米野球記者協会)」会員
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